アルファロメオの“とんでもないファミリーカー” 初公開からもう40馬力アップ!? 新コンパクトSUV「ジュニア」の“アルファらしい”走りとは?

AI要約

新型コンパクトSUV「ジュニア」は高性能仕様の「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」としてイタリアで試乗された。

腕利きエンジニアによるドライビングダイナミクスの担当で期待された新型「ジュニア」は、高性能モデルとして期待されていた。

「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」は最高出力280ps、最大トルク345Nmを持ち高い走行性能を誇る。

アルファロメオの“とんでもないファミリーカー” 初公開からもう40馬力アップ!? 新コンパクトSUV「ジュニア」の“アルファらしい”走りとは?

 アルファ ロメオの聖地といえるイタリア・バロッコのテストコースでおこなわれた国際試乗会。そこで初めて対面した新しいコンパクトSUV「ジュニア」は高性能仕様の「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」でした。

 正直、写真で見たときは違和感を覚えていた新型「ジュニア」ですが、その走りについては心配らしい心配をしてはいませんでした。なぜなら、ドメニコ・バニャスコさんという腕利きのエンジニアが、ドライビングダイナミクスを担当していることを事前に知らされていたからです。

 アルファ ロメオは2024年1月、当時まだ「ミラノ」と呼ばれていたこのクルマの開発担当者に関するプレスリリースをわざわざ出しました。正式発表まで2か月以上も時間があったにも関わらず、です。

 バニャスコさんは、スペシャルビークルを担当するチーフエンジニアで、いわばアルファ ロメオ開発陣の中のエースというべき存在です。「8Cコンペティツィオーネ」、「4C」、「ジュリア GTA/GTAm」、「33ストラダーレ」といったスペシャルモデルも、彼と彼のチームが仕上げたものであり、コンパクトSUV「トナーレ」の開発にも深く関わっていました。過去の僕(嶋田智之)のレポートを読んでいただければお分かりのとおり、彼らが手がけたモデルには駄作はありません。

 バニャスコさんと彼のチームが、かなり早い段階から新型「ジュニア」の開発に従事していたということは、ブランド初のBEV(電気自動車)をアルファ ロメオが“スペシャルビークル”同然と考えてきたことの証でもあります。

 そして同時に、早い段階からそれをアピールしていたのは、新型「ジュニア」にはピュアエンジン車が存在せず、メインモデルたるBEVとマイルドハイブリッド車との2本出てであることを不安視する熱烈なアルフィスティへのメッセージでもあったのです。さらに、その時点で完成に近づきつつあったドライビングダイナミクスへの自信の現れでもあることは、あっさりと予想できました。

 実際、新型「ジュニア」を走らせてみたら、やっぱり今回も感銘を受けちゃうぐらいの出来栄えだったわけですが、走りの印象をお伝えする前に、今回の試乗車となった「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」についておさらいしておきましょう。

“ヴェローチェ”というのは、アルファ ロメオ各モデルの高性能バージョンに与えられるネーミング。イタリア語で“速い”を意味する言葉です。実際「エレットリカ280ヴェローチェ」は、新型「ジュニア」のラインナップ中、最も高性能なモデルとなっています。

 基本骨格は他の「ジュニア」と当然ながら同じで、ステランティスグループのモジュラー型プラットフォーム“eCMP”を採用しています。ジープ「アベンジャー」やフィアット「600e」と基本は同じ、といっていいでしょう。

 ただし、そこはアルファ ロメオ。ドライビングダイナミクスに対するこだわりが他のブランドとは異なるので、かなり独自のセットアップやチューニングが施されています。

 まず、アップライトを専用品として設計をし直し、サスペンションのジオメトリーも変更。さらに、ナックルやアンチロールバー、ダブルハイドローリックストップと呼ばれる油圧ストッパーつきダンパーも専用品となります。

 加えて、ステアリングギアボックスにも改良が加えられ、レシオもBEVとしてはクイックな14.6対1という設定に。そして、これはが「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」にとって大きなトピックとなるのですが、“トルセンD”と呼ばれる機械式LSDを新たに開発・採用しています。

“トルセンD”は2006年に「147」で初めて採用された、トルク感応型機械式LSDの働きを電子制御する仕組みを持つ、小型軽量の“Q2システム”を大幅に進化させたもの。いずれはステランティスの他のスポーツモデルにも採用されるのかもしれませんが、現時点においては「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」の専用品となっています。

“曲がる”ということに対して、開発陣がどれほどこだわってきたのか。それが察せられる、ある意味“飛び道具”のようなデバイスです。

 パワーユニットに目を移しましょう。前輪を駆動するのは、旧グループPSAと日本のニデックによる合弁会社“Eモータース”が手がけた最新の“M4+”モーター。プジョー「E-3008」や「E-5008」に搭載される“M4”モーターの進化版と見ていいでしょう。バッテリーはエネルギー密度が高くコンパクトな、こちらも最新の54kWリチウムイオンバッテリーを採用しています。

 その組み合わせによって、「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」は最高出力280ps、最大トルク345Nmを発生、0-100km/h加速は5.9秒、最高速度は200km/h、航続可能距離はWLTPサイクルで334kmとなっています。

 ちなみに最高出力は、前身の「ミラノ」初公開時には240psと発表されていましたが、わずかな期間で40psもプラスされての登場となっています。