大井川鐵道の素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない

AI要約

大井川鐵道は昭和時代の名車が今も活躍し、SLが代名詞となっている。

本線はトンネルが多く、薄暗くやわらかな照明が昭和初期の夜汽車の雰囲気を醸し出している。

旧型客車の中には国鉄や西武鉄道のものだけでなく、展望車やお座敷車もあり、SLの香りや文化を楽しめる。

大井川鐵道の素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない

 静岡駅から東海道本線を西に30分ほど行ったところに、金谷駅(静岡県島田市)がある。その上りホームの静岡寄りは、東海道本線とはまた違った雰囲気がある。

 昔ながらの、どこか懐かしい1、2両の列車がたまにやってくる。昭和を感じさせる車両がたまらない。どのような風景を楽しめるのか、ワクワクさせてくれる。それが大井川鐵道だ。

 筆者(北條慶太、交通経済ライター)はその魅力に引かれて、すでに30回以上訪れている。今回は、そんな大井川鐵道の「やばい!」ポイントを四つお伝えしよう。

 大井川鐵道では、昭和時代に活躍した私鉄の名車たちが今も活躍している。まずは近鉄南大阪線で特急列車として活躍した16000系。車内にはオレンジ色のモケットの特急用シートがずらりと並ぶ。

 この車両は有料特急としてあべの橋から吉野まで多くの乗客を運んだ。デビューは1966(昭和41)年で、もうすぐ還暦である。それ以上の車両もある。元南海の21000系だ。南海高野線の特急・特急用として1958年に製造された。川根路ではいわゆる“湘南顔”のズームカーを見ることができる。

 東急7200系は1968年に製造された。鋼製車が主流だった大井川鐵道では文字通り異色の存在だ。東急の主要路線で活躍した後、青森県の十和田観光電鉄を経て、3度目の活躍の地となった。両運転式に改造されたため、単行運用にも対応する。現役車両は、大手私鉄時代と同じ塗装で、懐かしさを覚える。かつては京阪3000系のテレビカーも活躍していた。

 往年の関西の車両が静岡で楽しめるのは、関東側のファンにとってはうれしい限りだ。かつては小田急電鉄のロマンスカーSEや岳南鉄道のセミステンレスカー1100形、北陸鉄道の6010系などエポックメイキングな名車も大井川鐵道に在籍していた。

 大井川鐵道はSLの「代名詞」である。しかも、前述の列車よりもさらにさかのぼる国鉄の旧型客車を引いて走っているのが素晴らしい。

・オハフ33

・オハ35

・オハニ36

・スハフ42

・スハフ43

・オハ47

などがが拝める。

 大井川鐵道の本線はトンネルが多い。白熱灯は薄暗く、やわらかく、独特の光を作り出している。トンネル内ではまさに夜汽車の雰囲気だ。

・ずらりと並ぶボックスシート

・木製の床

・深くて丸い天井

など、昭和初期をほうふつとさせる。

 ちなみに、旧型客車は国鉄のものに限らない。西武鉄道の車両を改造した展望車「スイテ82-1」や、お座敷車の「ナロ80-1」「ナロ80-2」もある。通常のSL急行に展望車が連結されたこともあり、とてもゆったりとした雰囲気だった。

 窓を開けると、旧型客車の車内にSL独特の香りが入り込み、気分は最高潮に達する。たまらない空気だ。ご存じの人も多いと思うが、現在、SLと旧型客車を活用した「きかんしゃトーマス号」も運行されている。子どもたちに交通の歴史としてSL文化を伝える良い試みである。