国鉄の“やる気のなさ”が元!? 個室寝台「シングルデラックス」改良史 いまや特急「サンライズ」に残るのみ

AI要約

1958年に登場した日本初の1人用個室寝台車である20系客車のナロネ20の歴史から、最初の高級個室「ルーメット」の特徴や当時の寝台車の状況について述べられている。

1976年に登場した1人用A個室寝台車オロネ25の設計や評価、後に改良されて「シングルデラックス」と呼ばれるようになった経緯について説明がある。

オロネ25が国鉄末期の象徴とされる理由や改良点、愛称付けの経緯について詳細に説明されている。

国鉄の“やる気のなさ”が元!? 個室寝台「シングルデラックス」改良史 いまや特急「サンライズ」に残るのみ

 A個室寝台「シングルデラックス」は2024年現在、寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」だけの設備で、「みどりの窓口」で予約できる唯一のA寝台でもあります。

 なお、我が国における最初の1人用個室寝台は、1958(昭和33)年に登場した20系客車の2等個室寝台車ナロネ20です。ナロネ20・22はレール方向に寝台が設けられた1人用個室「ルーメット」を備えた、当時の最高級寝台車でした。

「ルーメット」とは、アメリカでは「トイレ付き個室」という意味ですが、日本では個室内にトイレはなく、折りたたみテーブルとなる洗面台が備わりました。ソファを前に倒すと、幅735mmの寝台になる構造で、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は「旧狩勝峠ミュージアム」(北海道新得町)のナロネ22で体験しましたが、寝台はまずまず、昼間時のソファは極上の座り心地でした。

 20系が老朽化した1976(昭和51)年に登場した、1人用A個室寝台車オロネ25は、後に最初の「シングルデラックス」となりますが、登場時は愛称もない個室A寝台でした。枕木方向に櫛型に幅1.2m、長さ1.945mの個室14室が並ぶ構造で、当時の国鉄では最高料金設備でしたが、登場時から不評でした。

 これは、合理化方針で設計されたオロネ25が、ナロネ20より居住性で劣ったからです。座面が寝台兼用のソファは、目の前が壁で圧迫感があり、窓側に座ると洗面台兼テーブルの脚部が干渉して、まっすぐ座れない(最終ロットの2両のみ設計変更)という、国鉄末期の「やる気のなさ」を象徴する車両でした。

 寝台には、肘掛けを跳ね上げると若干寝台幅が広がるギミックがあったものの、それでも寝台幅700mmで「ルーメット」以下、B寝台と同じでした。とはいえ個室A寝台は東京駅を発着する一部の寝台特急のみの憧れの設備ではありました。

 このオロネ25は国鉄末期の1986(昭和61)年に、オーディオ機器の取り付け、寝台幅拡大などの改良が行われ、「シングルデラックス」の愛称が付きます。