ペアローンを最も好むのは「東京」よりも「山形」、変動を避けるのは…? 「住宅ローンの県民性」をデータで分析

AI要約

住宅購入者の7割が変動金利でローンを組む時代において、都道府県別のデータから住宅ローンの県民性が明らかになる。

首都圏や近畿など大都市圏では変動金利が好まれる一方、地方では固定特約の選択率が高い要因として、不動産価格の影響やネット銀行の存在が挙げられる。

地方銀行の営業方針も影響し、地銀は固定金利を主力商品に据えていることが地域ごとの選択傾向に影響している。

ペアローンを最も好むのは「東京」よりも「山形」、変動を避けるのは…? 「住宅ローンの県民性」をデータで分析

 今や住宅購入者の7割が変動金利でローンを組む時代。ただ「都道府県別」に数字を見ると、また違った景色が……。データが示す「住宅ローンの県民性」とは? 

(前後編の後編)

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 今回参考にしたのは、住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」利用者の集計データである。

 2024年1~5月のモゲチェック利用者9031名を対象に算出された、「都道府県別金利タイプの比率」によれば、最も多い首都圏のユーザーのうち「変動金利」を選択した人は73%、一定期間の固定金利と変動金利を組み合わせる「固定特約」を選択した人は9%、「フラット35・全期間固定」を選んだ人は17%だった。

「変動金利の選択率が高い順」に調査対象の地域を並べると、近畿75%、首都圏73%、北関東64%、東海62%、九州61%、東北55%、山陽47%、甲信越46%となる。

 面白いのは、これ以外の地域では「変動金利」よりも「固定特約」が選ばれている点である。具体的には、北海道が34%対52%、北陸が26%対70%、山陰が23%対52%となる。

 最も「変動金利」の比率が低かったのは四国で、なんと10%に過ぎなかった。逆に「固定特約」は79%にのぼり、「フラット35・全期間固定」は10%だった。

 全国平均にならすと、「変動金利」が63%、「固定特約」が21%、「フラット35・全期間固定」が16%となるので、四国がいかに“異質”かが分かる。

 なぜ、ここまで数字に差が出るのだろうか。

「モゲチェック」を運営する住宅ローンアナリストの塩澤崇氏が次のように語る。

「近畿や首都圏など、大都市圏で変動金利の比率が高いのは、まず不動産価格の高騰が関係しているでしょうね。借入額が大きくなると、それだけ金利差の影響も大きくなりますから、変動が好まれるのでしょう。あとは低金利をウリにするネット銀行が強いエリアという事情もありそうです」

 とはいえ、Amazonの配送サービスはなにかと不便 な地方でこそより重宝される。実店舗の選択肢が少ない地方でこそ、ネット銀行が利用されそうなものだが――? 

「首都圏と比較すると、どうしても地方の物件は利便性の悪い場所に建てられるケースが多いですよね。そうすると、担保評価が十分に出ず、ネット銀行の変動金利ではフルローンで契約できないケースがあるのだと思われます。中古の戸建てになると、評価額は更に落ちてしまい、難しい。そういう意味でネット銀行は都市部で強く、地方では弱いのです」(塩澤氏)

 これに加え、地方銀行の営業方針による影響も大きいそうだ。

「地銀は3年、5年、10年の固定金利を主力商品として扱っています。一時期、私も北海道の札幌エリアのローン商品を調査したことがあるのですが、3年固定や5年固定の割合が非常に高かったと記憶しています」(同)

 地銀が「固定特約」を主力商品に据えるのには、地域密着型の営業であるがゆえに、「顧客になるべく変動リスクを負わせたくない」という考え方もありそうだ。