宇都宮LRT「西口延伸」は本当に成功するのか? 開業約1年で振り返るべき、「富山ライトレール」があまり活性化につながらなかった3つの理由とは

AI要約

2023年8月に開業した次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」は、開業からわずか半年で街の様相を一変させ始めた。LRTは好調で、利用者数や影響が顕著に現れている。

不動産市場への影響も顕著で、栃木県内の地価が上昇しており、商業地の平均価格も上昇している。また、マンション販売も好調で、観光客数も18%増加している。

2030年代前半の「西口延伸計画」も期待されており、JR宇都宮駅と東武宇都宮駅がLRTで接続されることで、市街地の活性化が促進される。

宇都宮LRT「西口延伸」は本当に成功するのか? 開業約1年で振り返るべき、「富山ライトレール」があまり活性化につながらなかった3つの理由とは

 2023年8月に開業した次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」は、開業からわずか半年で街の様相を一変させ始めた。JR宇都宮駅東口と芳賀・高根沢工業団地を結ぶ14.6kmの路線は、予想以上の効果を生み出している。

 現状明らかになっているデータを見ると、LRTは好調だ。開業半年で利用者数は当初予測の約31万2400人を上回り、6か月目(2024年1月26~2月25日)には

「約37万人」

となっている。累計乗客数は7月2日に400万人に到達している。

 不動産市場への影響も顕著だ。栃木県の公表した2023年の基準地価を見ると県内の最高価格は駅東公園前停留所近くの「宇都宮市東宿郷3の3の16」の14万9000円で、前年から

「4.2%」

上昇。2位も同停留所付近の「宇都宮市元今泉5の7の14」で、4.0%上昇の13万1000円となっている。

 栃木県内の商業地の平均価格は6万7700円だが、JR宇都宮駅東口に面した「宇都宮市東宿郷1の4の14」は40万1000円となっている(3.1%増)。JR宇都宮駅東側では6階建て以上の建築申請が急増し、2018~2022年度には22件に達した。これは前5年間と比べて6件の増加である。

 マンション販売も好調で、販売開始から、からわずか3か月で完売するマンションも出ている。地元だけでなく、首都圏からの購入者も目立つという。観光面でも効果は顕著で、2023年の観光客数は

「1271万人」

を記録し、前年比18%増を達成した。

 この成功を受け、宇都宮市のさらなる発展のために期待されているのが、2030年代前半の開業を目指すLRTの「西口延伸計画」だ。計画ではJR宇都宮駅西口から県教育会館まで約5km・12停留所の延伸を予定している。これにより、

「JR宇都宮駅と東武宇都宮駅がLRTで接続」

することになる。宇都宮市は1885(明治18)年に現在のJR宇都宮駅が日本鉄道の駅として開業。その後、1931(昭和6)年に東武宇都宮駅ができた。

「栃木の謎! JR宇都宮駅と東武宇都宮駅、なぜ「2km」も離れているのか」(2023年3月12日配信)にも書いたが、後発の東武宇都宮駅が刑務所跡地などの公有地の払い下げを利用して市の中心部に建設されたのに対し、JR宇都宮駅は郊外に位置した。その結果、両駅間の距離は直線で1.6kmとなり、JR駅と市街地の間をバスが二極構造で循環する交通体系となった。

 LRTの延伸により、新市街として開発が進むJR宇都宮駅の東側と市街地中心部が一体化する。これにより、広いエリアの活性化が期待される。しかし、この野心的な計画を成功させるためには、先例に学ぶ必要がある。ここで注目すべきは、日本のLRT導入の先駆けとなった富山市の経験である。