熊本市電「顔認証システム」導入見送り! 利用者の利便性を考えたら、結局「ICカード頼み」なのか?

AI要約

顔認識システムの導入が進んでいるが、一部の都市ではコストや処理時間の問題から取りやめられるケースもある。

日本国内では、熊本市電が顔認証の導入を取りやめる決定を下し、千葉県佐倉市の山万ユーカリが丘線や大阪メトロが顔認証システムを導入している。

顔認証技術は鉄道業界だけでなく、空港やホテル、オフィス、小売店などさまざまな分野で活用され、将来的に都市のスマート化に貢献する可能性がある。

熊本市電「顔認証システム」導入見送り! 利用者の利便性を考えたら、結局「ICカード頼み」なのか?

 近年、顔認識システムの導入が急ピッチで進んでいるが、その流れが変わりつつある。

 2023年12月から顔認証の実証実験を行い、全国共通ICカードシステムからの離脱を表明していた熊本市電が突如、顔認証の導入を取りやめたのだ。7月23日に行われた、地域公共交通に関する特別委員会での市の説明によると、

・システムの導入費:約6000万円

・固定費:年間800万円

がかかり、さらに既存システムよりも処理時間がかかるという問題が顕在化したという。

 早速、熊本市交通局の担当者に理由を聞いた。今回の決定にいたった理由は次のとおりだ。

「バスと違い、市電は半数近くが全国共通のICカードを使用しており、市議会からの指摘を受けて再検討しているところです。そのなかで、顔認証の導入は現実的ではないという判断になりました」

 全国共通ICカードの問題が解決したら顔認証は見直すのか、との質問には

「当面は再検討しないと思います」

と答えた。コスト問題が予想以上に大きかったことをうかがわせる。

 交通機関への顔認証導入は今どうなっているのか――。

 千葉県佐倉市の山万ユーカリが丘線は、2024年6月15日から全線で顔認証改札システムを本格導入した。磁気定期券の代替システムとして、まずは通勤定期券利用者を対象に導入を開始。現在使用している磁気定期券は引き続き使用できるが、次回の更新から顔認証改札システムに切り替える必要がある。

 大阪メトロは、2025大阪・関西万博に向けたキャッシュレス・チケットレス改札施策の一環として、

「ウォークスルー型顔認証改札機」

の導入を進めている。同機は、2023年11月23日に御堂筋線なんば駅北東改札に設置され、まずは同社社員向けに利用が開始されたが、2024年度末までには一般乗客向けにも利用が開始される予定だ。

 お隣の中国は顔認証技術の実用化で世界をリードしている。すでに多くの鉄道駅で顔認証改札機が導入されている。例えば、成都地下鉄は2021年9月1日、

「12路線287駅」

すべての改札口に同時に顔認証機能を導入した。全路線網の全改札機に一度に顔認証機能を導入したのは中国初のケースだった。

 顔認証の導入は鉄道業界にとどまらない。

・空港

・ホテル

・オフィス

・小売店

など、さまざまな場面で活用されている。例えば、米国ではグローバル・エントリー・プログラム(GEP)と呼ばれる入国前審査プログラムが導入されている。このプログラムに承認された旅行者は、顔認証を含む簡単な審査で入国できる。

 また、2025大阪・関西万博では、入場ゲートでの顔認証システムの導入を予定している。これにより、迅速な入場が可能となる。さらに、電子マネーと連動した顔認証決済システム「ミャクペ!」も導入される。

 将来的には、公共交通、商業施設、公共サービスなどが同技術を核に有機的に結びつき、都市生活をより便利で安全なものにする可能性がある。改札システムは、広域スマートシティ実現の一翼を担うことになる。