2024年5~6月に新規上場した「IPO株」12銘柄の投資判断を公開! 機関投資家も注目する「アストロスケールHD」、配当利回り4%超の「豆蔵デジタルHD」を解説

AI要約

2024年5~6月に新規上場した12銘柄のIPO株のうち、アストロスケールホールディングスと豆蔵デジタルホールディングスに注目が集まっている。アストロスケールホールディングスはスペースデブリ除去に取り組む宇宙ベンチャーで堅調な初値を記録し、豆蔵デジタルホールディングスは広範囲のDX支援を行う企業で配当利回りの魅力もある。

IPO市場では初値の騰落率が12社平均でプラス20%となったが、6月前半は初値が好調だったものの後半は不調な動きが見られた。株価の値動きは短期志向の投資家による影響も大きい。

アストロスケールホールディングスや豆蔵デジタルホールディングスを含む12銘柄のIPO株に関するアナリストの投資判断はどちらも強気であり、新規上場した企業の今後の動向が注目される。投資家は企業の実力に見合った株価水準を見極める必要がある。

2024年5~6月に新規上場した「IPO株」12銘柄の投資判断を公開! 機関投資家も注目する「アストロスケールHD」、配当利回り4%超の「豆蔵デジタルHD」を解説

 2024年5~6月に新規上場した「IPO株」12銘柄のうち、アナリストの投資判断が“強気”の「アストロスケールホールディングス」と「豆蔵デジタルホールディングス」に注目! 

●2024年5月に新規上場した「IPO株」は1銘柄のみ! 

6月には11銘柄が上場し、IPO市場への注目度がアップ! 

 5月に上場したのは1銘柄のみだが、6月の新規上場は11社。公開価格に対する初値の騰落率は、12社の平均でプラス20%。やや伸び悩んだ印象だ。

 6月5日に上場したアストロスケールホールディングス(186A)がプラス51%となるなど、6月前半は全般に堅調な初値となった。しかし後半は一転して不調で、2社が公開価格割れに。初値が好調の銘柄は、その後に反動安に見舞われるケースも多かった。それを見た投資家が、6月後半は初値段階で過度に買い上がるのを控えた可能性がある。

 一方で、6月20日に上場したPostPrime(198A)が初値をつけた後に急騰するなど、全体としてはIPO銘柄に対する物色意欲はまずまず強そう。

 「下落が続いていた東証グロース250指数は、底入れ感も。新興株市場の本格的な復活までは至っていませんが、取引する上での安心感にはなります。公募・売出規模が230億円超と比較的大型の上場だったアストロスケールホールディングスが健闘したことにも、IPO株への注目が感じられます」(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチの小林大純さん)

 ただし、現状はまだ短期志向の投資家の影響が大きいと、小林さんは指摘する。

 「話題性や株式需給(売りと買いのバランス)に着目したトレーディングが多いとみられ、値動きが荒い点は要注意です。企業の実力に見合った株価水準か、慎重に見極める必要があります」

 業績が良好、あるいは成長期待が大きくても、“買われ過ぎ”の銘柄は避けたほうが無難だ。

 ●2024年5~6月に上場した【IPO株】12銘柄! 

 上場日

 公開価格

 初値

(騰落率)

 株価

(7/5)

 PER

(PBR)

 今後1年の

高値予想

(安値予想)

 投資判断

 5月28日

◆学びエイド(184A・東G)

 970円

 1282円

(+32.2%)

 891円

 16.4倍

(6.93倍)

 1300円

(800円)

 中立

 【分析コメント】学習塾など教育関連事業者向けの講義動画や配信システムが好調。教育の個別最適化・デジタル化が追い風。ただ、類似企業は生徒減少や競争激化で低迷気味だ。

 6月5日

◆アストロスケールホールディングス(186A・東G)

 850円

 1281円

(+50.7%)

 894円

 ー

(19.23倍)

 1300円

(700円)

 強気

 【分析コメント】スペースデブリ除去に取り組む宇宙ベンチャー。注目度は大きく、公募・売出規模230億円超の大型案件ながら初値は堅調。機関投資家の購入も観測された。

 11日

◆D&Mカンパニー(189A・東G)

 1000円

 1308円

(+30.8%)

 1040円

 12.4倍

(1.77倍)

 1300円

(900円)

 中立

 【分析コメント】医療・介護・福祉事業者の経営サポートを手掛ける。資金調達支援の債権買取り(ファクタリング)などが順調に拡大。株価は事業内容と成長性に見合った水準という印象だ。

 14日

◆Chordia Therapeutics(190A・東G)

 153円

 255円

(+66.7%)

 254円

 ー

(4.53倍)

 260円

(130円)

 弱気

 【分析コメント】RNA制御ストレスを標的とする抗がん薬を開発。白血病向けは2026~2027年中の国内承認申請を目指す。上場後の株価上昇は、最近のバイオ株物色による面も。

 18日

◆インテグループ(192A・東G)

 3960円

 5940円

(+50.0%)

 6140円

 14.5倍

(9.24倍)

 7500円

(5500円)

 中立

 【分析コメント】M&A仲介。小型案件、自社での直接提案営業が中心で、同一戦略の競合が少ない。完全成功報酬で顧客の納得感は強いとするが、業界への規制強化の動きに注意。

 19日

◆ライスカレー(195A・東G)

 1420円

 1560円

(+9.9%)

 1258円

 13.9倍

(4.97倍)

 1800円

(1100円)

 強気

 【分析コメント】SNSを活用したマーケティング支援。美容・アパレルなどで自社ブランド商品販売も。株価は妥当な水準を探る展開だが、前期に黒字化し、利益成長に期待。

 20日

◆WOLVES HAND(194A・東G)

 770円

 875円

(+13.6%)

 875円

 12.0倍

(3.57倍)

 1300円

(800円)

 強気

 【分析コメント】一次診療から高度医療まで対応可能な動物病院を33拠点運営。ペット医療市場は緩やかに拡大している。年5~20拠点増やす方針で、成長加速も期待できそう。

 20日

◆タウンズ(197A・東G)

 460円

 430円

(-6.5%)

 410円

 7.4倍

(2.97倍)

 500円

(390円)

 中立

 【分析コメント】インフルエンザなど感染症の抗原検査キットを手掛ける。新型コロナ検査需要の増加を想定したが、流行が落ち着き、2024年6月期の業績は下ブレか。今後の成長ペースを注視。

 20日

◆PostPrime(198A・東G)

 450円

 450円

(±0%)

 1125円

 47.3倍

(13.81倍)

 1400円

(500円)

 弱気

 【分析コメント】金融・経済情報のSNSを運営。代表取締役の高橋ダン氏はユーチューバーなどとして知られ、自身の情報発信もあって株価は大幅上昇。業績は堅調も期待先行。

 21日

◆MFS(196A・東G)

 400円

 368円

(-8.0%)

 343円

 ー

(2.76倍)

 450円

(300円)

 中立

 【分析コメント】住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」と不動産投資サービス「INVASE」を手掛ける。売上成長のため広告宣伝・システム開発投資を続け、黒字化時期は明言せず。

 27日

◆豆蔵デジタルホールディングス(202A・東G)

 1330円

 1348円

(+1.4%)

 1362円

 16.0倍

(9.67倍)

 1700円

(1300円)

 強気

 【分析コメント】2020年にMBOで上場廃止した豆蔵HDが前身。幅広い領域で企業のDXを支援。ファンドの将来的な保有株売却が警戒されそうだが、株価に割高感はなく高配当。

 28日

◆ロゴスホールディングス(205A・東G)

 2290円

 2290円

(±0%)

 1980円

 8.5倍

(2.29倍)

 2400円

(1700円)

 中立

 【分析コメント】北海道地盤の注文住宅を手掛ける企業。DXによる効率化と価格優位性が強み。住宅市場の逆風を東北や北関東への展開で跳ね返すか注目。配当性向30~50%で配当を目指す。

 ※データは2024年7月5日時点。

●6月のIPO株の中で、アナリストおすすめの2銘柄を紹介! 

「アストロスケールHD」と「豆蔵デジタルHD」に注目! 

 ここからは、6月のIPO株の中で小林さんが特に注目する2銘柄を深掘りしていこう。

 一つ目の銘柄は、注目度が大きい宇宙ベンチャーのアストロスケールホールディングス(186A)だ。

 アストロスケールホールディングスはispace(9348)、QPS研究所(5595)に続く3社目の宇宙ベンチャーIPO。深刻な問題であるスペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去に取り組む初の民間企業。宇宙空間の飛翔物体に近接・捕獲するコア技術を応用し、衛星の寿命延長などのサービスも想定する。まだ技術開発段階で黒字化時期は明言していない。赤字のためPERによる評価ができないが、株価は上場前に行った増資時の評価額1250円が1つの目安になる。

 もう1社は、幅広い領域でDX支援を行う豆蔵デジタルホールディングス(202A)だ。

 豆蔵デジタルホールディングスは企業のDXを支援する企業。クラウドやAIの導入・活用に関するコンサル、製造現場の自動化、産業用ロボットの開発支援など対象領域は幅広い。顧客は大手企業が主。PER水準に割高感はない。今後3期は売上高で年10~12%、営業利益で15~17%の成長を目指す。4%超の配当利回りは魅力だ。配当性向は50~70%が目安。