日本企業とイスラエル軍需企業の関係が「東南アジア」でのビジネスを妨げるワケ 川崎重工業への抗議デモから考える

AI要約

イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を巡る攻防が激化する中、パレスチナ支持団体が川崎重工業に対する抗議活動を行い、イスラエル製ドローンの輸入停止を求めている。

川崎重工業はイスラエル製ドローンの導入計画があり、批判を受けているが、企業の対応は不透明である。

中東情勢の混乱が経済にも波及し、イスラエル製品へのボイコットや米国への不満が広がっている。また、各国のイスラエルへの対応も様々な影響を及ぼしている。

日本企業とイスラエル軍需企業の関係が「東南アジア」でのビジネスを妨げるワケ 川崎重工業への抗議デモから考える

 2023年10月7日以降、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスなどとの攻防が続くなか、川崎重工業の神戸本社前で7月8日、パレスチナ支持団体の関係者40人あまりが川崎重工業に対してイスラエル製ドローンの輸入を停止するよう求める抗議活動を行った。

 この団体はオンラインで集まった2万3000人あまりがサインした署名を川崎重工業側に手渡し、今後適切に対処したいとのコメントを出している。パレスチナ支持団体の関係者からは、

「ドローンの輸入はイスラエルに利潤をもたらし、パレスチナでの虐殺を助長する」

「日本はロシアに対しては厳しい姿勢に撤するのに二重基準だ」

「企業の使命を改めて考えてほしい」

などの声を聞かれた。

 毎日新聞の報道によると、防衛省が防衛力整備計画に基づいてドローン7機の導入を予定しており、そのうち5機がイスラエル製で、川崎重工業はそのうち1機でイスラエルの軍需企業と間で輸入代理店契約を締結しているという。今後、川崎重工業が

「人権と経済の間」

でどのような対応を示すかはわからないが、長年日本企業を取り巻く地政学・経済安全保障リスクのコンサル業務に従事する筆者(和田大樹、外交・安全保障研究者)としては、日本企業にとってイスラエル企業との関係は企業の

「レピュテーションリスク(会社、製品、従業員に関する否定的な評判や風評により事業が損害を受けるリスク)」

という観点から大きな問題になっているように感じる。

 2023年秋以降、イスラエルはパレスチナに対する攻撃をエスカレートさせ、罪のない女性や子どもなど多くが犠牲となり、これまでの死亡者数は4万人に迫ろうとしているが、ネタニヤフ政権は一向に攻撃の手を緩める気配を見せない。それによって国際社会では当然のようにイスラエルへの批判がアラブ諸国を中心に広がり、イスラエル支持に撤する米国への不信感やいら立ちも拡大している。

 中東のレバノンやイエメン、シリアやイラクを拠点とする親イランのシーア派武装勢力などはハマスとの共闘を宣言し、反イスラエル、反米闘争をエスカレートさせ、レバノンのヒズボラはイスラエル領内へのロケット弾などによる攻撃を強化し、イエメンのフーシ派は公海を航行する外国船舶への攻撃を続けている。

 そして、こういった情勢は経済の領域へも影響を及ぼしている。イスラエルによる攻撃がエスカレートするにつれ、イスラム教国の間ではイスラエルに抗議するデモが拡大するだけでなく、イスラエル製品をボイコットする呼び掛けがネット上で拡散し、店頭からイスラエル製品がなくなるといった事態が生じている。

 日本企業の進出も多い東南アジアのインドネシアやマレーシアでは、この事態に対して米国への不満が広がり、現地にあるマクドナルドやスターバックスなどへの客足が減り、売り上げに影響は出ているという。

 また、外交上でも、トルコ(イスラム教国)は4月、鉄鋼やジェット燃料、化学肥料や建設機器など54品目についてイスラエルへの輸出を制限する措置を実施し、5月からはイスラエルとの貿易を全面的に停止すると発表した。

 南米のコロンビアは5月にイスラエルとの断交を発表し、モルディブ(イスラム教国)は6月にイスラエル人の入国を禁止するなど、ビジネス面の影響が広がっている。