「1年働いただけ」43歳・無職長男に貯金8000万を"完璧"に残す老親…自分にはお金を使わない親は幸福か不幸か

AI要約

40代の無職の長男と共に暮らす高齢の両親が、相続税対策を検討している。

長男は就職に失敗し、精神的に不安定だったため、実家で暮らすことになった。

両親は贈与を考えて相続税対策を行うことを検討している。

わが子が社会人になっても働かずに何十年も実家にいたらどうしたらいいのか。高齢化する親の悩みは、自分たちの他界後。リタイア後も貯金を自分たちの楽しみにほとんど使わず、そっくりそのまま残そうとするケースもある。FP村井英一さんが家計相談に乗った事例を紹介しよう――。

■実家同居の無職40代の長男対策…老親がした驚きの行為

 働けない子どもとその親の高齢化が進んでいます。高齢の親にとっては、自分たちが亡くなった後に、はたして子どもが自立した生活を送れるのかが心配です。そのためにも、少しでも多くの財産を子どもに残してやりたいというのは自然な気持ちでしょう。

 ただ、相続財産が多くなると、相続税が多くかかるようになります。その点も親にとっては心配のタネで、相続税についていろいろと調べている親も少なくありません。ただ、「いつ亡くなるか」だけはわかりませんので、“節税策”は簡単ではありません。

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【相談者の家族構成】

父親:鈴木 幸一さん(仮名)78歳(無職) 相談者

母親:恵子さん(仮名)75歳(無職)

長男(43歳、無職)と同居

※長女(40歳)は結婚して別世帯

◆資産

・預貯金:8000万円

・ご自宅(戸建て、評価額6500万円)

◆収入

父親:年金200万円

母親:年金100万円

◆支出

・生活費:年額300万円

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 鈴木さんご夫婦(夫78歳、妻75歳)がご相談に来られたのは、2024年5月のことでした。

 「長男(43歳)は今後も仕事は難しいと思います。それだけに、私たちがいなくなっても困らないだけの資産を残してあげないと、と考えています」

 聞けば、長男は協調性に欠ける部分があり、周囲とうまくやっていくのが難しかったようです。それでも学校生活はなんとかやり過ごすことができました。中学、高校時代は学校を長期間にわたって欠席することはありましたが、不登校までは至らずに、無事に卒業しました。

 その後、専門学校を経て地元の企業に就職しましたが、仕事は長続きしませんでした。どうも“空気を読む”というのが苦手なようで、たびたび周囲とトラブルを起こしてしまいました。結局、1年程度で退職してしまいました。

 心療内科を受診もしましたが、退職してからは落ち着いてきたこともあり、通院を止めてしまいました。そのため、障害年金の請求はしていません。

 実家で暮らしているので、本人に収入がなくても生活に困ることはなく、両親も無理には就職を勧めなかったそうです。働いていた時期は、精神的にも荒れていたからでした。

 「うちの子は、どうもビジネスでの競争社会は向いていないようなんです」

 父親の場合、就職にこだわる人が少なくありませんが、今回の両親はそろって長男の状況に理解を示していました。そのせいかどうか、そのままの状況で長男はすでに40代になっていました。一方、妹さん(40歳)は学校を卒業すると就職し、今では自宅を出て世帯を持っています。

 「長男にはできるだけ預金を残してあげたいと貯蓄(8000万円)をしてきたつもりですが、このままだとかなり相続税がかかってしまうようです。私が生きているうちに、毎年110万円の範囲内で贈与しておこうかと思うのですが、どうでしょうか?」