無人のトラックが先頭車両を追従する「カルガモ走行」! トラック運転士不足の解決に向けた「現実的な解答」はココまできてる

AI要約

自動運転の実現には高度なシステム構築が必要であり、隊列走行が実用化に向けて試験中。

隊列走行は段階的な自動化プロセスを経て、2035年から40年に実用化が見込まれる。

自動運転トラックの導入に向けて政府機関や業界が協力し、共有の取り組みでスピードアップを図る。

無人のトラックが先頭車両を追従する「カルガモ走行」! トラック運転士不足の解決に向けた「現実的な解答」はココまできてる

 完全自動運転を実現するためには高精細な3Dマップと高性能な車体周囲のスキャニング、あらゆる交通状況を想定した人工知能とクラウドを組み合わせ、最終的にはオペレーターのバックアップも備えた高度なシステムの構築が必要とされている。

 完全自動運転はドライバー不足を解消させる画期的対策と考えられているけれど、あまりに膨大なテストケースを学習させる必要があるため、いまだに実現できている自動車メーカーは存在しない。そこで現実的なドライバー負担軽減の手段として導入に向けた実験が進められているのが「後続車無人隊列走行」だ。これは文字どおり、隊列走行の後続車両を無人化するもの。

 隊列走行とは、複数台の車両が連なって走行していく、カルガモ走行とも呼ばれる形態だ。先頭車両と後続車は無線で通信されており、先頭車のドライバーの操作が即座に後続車にも反映されることで、操作遅れによる危険を防止する。そのため80km/hでの走行中も車間距離が短く、空気抵抗の軽減にも役立つのだ。

 日本でもこの隊列走行を研究開発している。トラックメーカー単独でのテストコース内での試験走行から、国や地方自治体が主導した公道での実証実験へと着実に研究のレベルを上げて、実現を目指している。

 じつはこの隊列走行にも、完全自動化への段階的なプロセスがある。まずはじめは自動運転のレベル2に相当する、ドライバーが運転席に座ってハンドルを握って運転を監視しながら、前走車を追従するという状態。これが隊列走行におけるステップ1だと自動車メーカーの団体である日本自動車工業会は定義している。

 その次が、後続車両は無人ではないものの、ドライバーは走行中に休憩できるもので、自動運転のレベルで言えばレベル3に相当する状態だが、日本自動車工業会のロードマップではレベル2と3の中間となるレベル2.5相当と見ている。これが隊列走行におけるステップ2だ。

 その先にあるのが準自動、あるいは自動運転による後続車無人隊列走行なのである。これはステップ3となるもので、ほぼ隊列走行の自動運転化としては最終目標といっていい。

 実際には後続車のドライバーの乗降をどういう状態で行うか、車両を入れ替えるのか、荷物だけ積み下ろしするのかなど、さまざまな走行モデルが想定されている。

 現在はステップ2の段階で実証実験を行い、課題をひとつずつチェックしてクリアさせていく段階。物流拠点を高速道路と直結させて、運転手の乗り降りや荷物の積み替えを実現させることが、今後、検討されている。

 自動運転トラックの専用レーンを設け、一般車両とわけることで割り込みなどを防ぐことも考えられている。

 2023年9月に開かれた警察庁の調査検討会による資料によれば、隊列走行機能をもった自動運転トラックの普及は2030年以降と予測しているので、実際には2035年から40年あたりにようやく実用化されることになりそうだ。

 これらは、総務省や経産省、国土交通省、地方自治体、鉄道会社(バスを想定)などが主体となってそれぞれプロジェクトを進めている。参画するトラックメーカーや物流事業者はほぼ同じなのでノウハウは共有できるだろうが、もっと一体となって取り組んだ方が開発のスピードアップは図れそうだ。

 高速道路内だけとはいえ、80km/hで走行する無人走行が実現できれば、物流の効率やドライバー不足の解消に役立つのは間違いない。早期の実現を期待したい。