カスハラ、直近1年で企業の15.7%が被害「あり」

AI要約
カスタマーハラスメント(カスハラ)の定義と企業への影響について企業のカスハラに関する意識調査結果業界別におけるカスハラの分布と規模別の傾向
カスハラ、直近1年で企業の15.7%が被害「あり」

 「顧客や取引先などからのクレーム・言動のうち社会通念上不相当なものであり、その手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されるカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)。

 カスハラは、企業対個人に限らず、企業対企業でも起こり得る。著しい迷惑行為により、従業員の精神的苦痛や退職リスク、業務効率低下などの悪影響が生じる恐れがあるため、厚生労働省では有識者検討会を通じて、企業に従業員保護を義務付ける法整備を進める方針を示した。

 なお、東京都ではカスハラ防止条例を今秋、都議会に提出し、制定されれば全国初となる見通しだ。

 そこで、帝国データバンクは、カスハラに関する企業の意識について、全国の企業に調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年6月調査とともに行った。

 直近1年以内に自社もしくは自社の従業員がカスハラや不当な要求などを受けたことがあるか尋ねたところ、「ある」とした企業は15.7%となった。規模別でみると「大企業」が21.0%、「中小企業」が14.8%、「小規模企業」が14.4%であった。

 また、直近1年以内にカスハラなどを受けたことが「ある」企業を業界別でみると、『小売』(34.1%)がトップとなり、『金融』(30.1%)、『不動産』(23.8%)、『サービス』(20.2%)と主に個人を取り引きの対象とする業界が比較的高い割合で並んだ。また、主に企業間での取り引きが多い『製造』(7.8%)や『運輸・倉庫』(12.9%)、『卸売』(13.1%)などは全体平均を下回った。

 他方、カスハラなどを受けたことが「ない」企業は65.4%となり、「ある」よりも4倍以上高かった。規模別では、「大企業」が49.7%、「中小企業」が68.3%、「小規模企業」が71.6%で、規模が大きい企業ほどカスハラを受けている結果となった。

 企業からは、「自分のわがままを押し通そうとし、思い通りの結果にならないと罵倒する年配の方が多い」(金融)や「近年はネットに書くと脅されるほか、一方的に事実無根の悪評を書き込まれ、対応に苦慮している」(専門商品小売)などの声があがった。

 「ない」「分からない」と回答した企業からは「どこまでの発言・行為がカスハラに該当するのか不明なため、判断しづらい」(情報サービス)のように、判断の難しさを訴える声が多数みられたほか、企業からは、「BtoBの事業会社であり、表立ったカスハラ経験がなく、遭遇する機会もない」(建材・家具、窯業・土石製品製造)のように、そもそもカスハラなどを受ける状況がないといった声も聞かれた。