日銀国債買い入れ減額の具体策を展望する

AI要約

日本銀行は7月30日、31日に金融政策決定会合を開催し、国債買い入れ減額の具体策を発表する予定。

市場参加者からの意見はばらつきがあり、具体策が未定であるが、毎月の減額規模や買い入れ目標に関するポイントが注目されている。

日本銀行は国債残余期間を短くすることで保有国債の平均残存期間を縮小し、国債買い入れの停止を目指す可能性もある。

日銀国債買い入れ減額の具体策を展望する

日本銀行は7月30日、31日に開かれる金融政策決定会合で、国債買い入れ減額の向う1年から2年程度の具体策を公表する。日本銀行は7月9日と10日に、国債買い入れ減額について市場参加者からヒアリングを行い、その概要を19日に公表した。

参加者の意見はかなりばらつきがあり、この概要からは、日本銀行が最終的にどのような具体策を打ち出すかは明確には見えてこない。ポイントとなるのは、国債買入れ減額の規模をどの程度とするか、国債買い入れ額を特定水準で示すかそれともレンジで示すか、買いれ額の方針をどの程度の頻度で見直すのか、国債の残存期間別に減額の規模を変えるのか、などとなろう。

筆者は、向う1年から2年の毎月の減額規模は3兆円~4兆円(買い入れ規模は2兆円~3兆円程度)、買い入れ目標額は特定水準に「程度」をつけて示し、四半期ごとに見直す、減額の程度は長めのゾーンを多めとする、などを現時点では想定している。

償還見合いで国債保有残高を迅速に削減していくためには、日本銀行が保有する国債の平均残存期間を短くすることが、その助けとなる。将来的には、日本銀行は国債買い入れを停止して、国債保有残高を迅速に削減することを目指す可能性もあるだろう。国債保有残高を迅速に削減して正常化を進めるために、日本銀行は長めのゾーンの国債の買い入れ減額をやや厚めにし、保有国債の平均残存期間を短くするのではないか。

ただし、長めのゾーンの買い入れを大幅に減額すると、長期金利の上昇(イールドカーブのスティープ化)リスクが高まり、銀行が保有する国債の含み損を拡大させてしまう。そのため、銀行が国債買い入れを控える、日本銀行から銀行への国債の移転という正常化が円滑に進まなくなる可能性が出てくる。この点に配慮すれば、日本銀行は当面のところは、ゾーンごとの減額規模に大きな差はつけないのではないか。

米連邦準備制度理事会(FRB)が実施した量的引き締めの前例に照らすと、日本銀行が行おうとしている量的引き締めは、以下の3つの点で異なるものであり、またそれは予想外のことだった。

第1に、国債残高削減額の目標、いわゆる「ストック目標」ではなく、国債買い入れ額の目標、いわゆる「フロー目標」にする、と既に総裁が明言していることだ。国債買い入れ額を減額した上で一定水準に維持しても、償還額は日々変化するため、残高削減のペースは一定ではなくなる。量的引き締めの国債市場への影響は、日本銀行が保有する国債の残高の変化で主に決まると考えられることから、このフロー目標が果たして適切な目標なのか、疑問が残る。

第2に、FRBは、短期金利を一定程度引き上げた後に保有する債券の残高削減、つまり量的引き締めを開始する、との方針を示した。しかし日本銀行は、短期金利が0%程度の水準の下で、早くも量的引き締めを開始する。3月のマイナス金利政策解除後に予想外に進んだ円安が、日本銀行の量的引き締めの開始時期を早めた可能性が考えられる。

第3に、総裁は、「超過準備ゼロが望ましいという前提では考えていない」と述べている。これは、国債買い入れの減額を進めた後も、国債の保有残高を相当程度残すことを意味する。国債の残高を相当程度残し、超過準備を維持するのであれば、量的緩和策はずっと続くことになる。

こうした方針には、長期金利の上昇リスクを減らす狙いがあるのかもしれないが、金融政策の正常化に舵を切ったにも関わらずなぜ量的緩和策(バランスシート政策)を完全に正常化しないのか、不思議だ。日本銀行にはこの点について、詳しく説明して欲しい。