“元祖”タワマン文学作家・窓際三等兵「作家になりたいのなら、いきなり文芸賞に応募するのではなく、まずはSNSで存在感を示しなさい」

AI要約

タワマン文学が直木賞候補になる可能性について述べられた記事。

現代社会における承認欲求と出版活動に関する考察。

作家を目指す際にSNSの重要性や出版活動の意義について説明。

“元祖”タワマン文学作家・窓際三等兵「作家になりたいのなら、いきなり文芸賞に応募するのではなく、まずはSNSで存在感を示しなさい」

「あんなものは文学じゃない」。そんな批判にさらされることも多かったタワマン文学が、ついに直木賞候補作となった。麻布競馬場氏の『令和元年の人生ゲーム』(文芸春秋)は果たして直木賞を受賞できるのか。

“元祖”タワマン文学作家の窓際三等兵氏は「直木賞を目指すにも、作家を目指すにも、まずはSNSでフォロワー数を増やすのが第一。じゅそうけん氏や戦記氏、ポンデベッキオ氏などがその見本だ」という。なぜなのかーー。みんかぶプレミアム特集「なぜあなたの文章はつまらないのか」最終回。

 令和が承認欲求の時代であることに異論の余地はないだろう。人々はスマホ片手に、いかに自分が優れた人間であるか、称賛に値するかをアピールすることに余念がない。その一方で、現代社会において持たざる者が承認欲求を満たすのは難しい。インスタを開けば寿司に金粉を振りかけるようなキラキラした写真が無限に飛び込んできて、X(旧Twitter)のタイムラインには「年収1000万円は東京では貧困層!」という類の文字列が飛び交う。上には上が無限にいることが可視化された社会では、承認欲求を満たすこともままならない。

 プロ野球選手やサッカー選手になれるほど運動神経が高い訳でもなく、ミュージシャンになれるほど音楽センスがあるわけでもなく、漫画家になれるほど絵がうまいわけでもなく、俳優になれるほど顔が良いわけでもなく、スタートアップを立ち上げるほどの情熱があるわけでもない。そもそも、何かを積み重ねることをしないまま無駄に年齢を重ねてきた、それが私たちだ。

 そんな我々にとって残されたラストリゾートが出版活動であることに異論の余地はないだろう。本を出した瞬間、あなたの肩書きは「作家」となり、国会図書館にあなたの著書が蔵書として納入される。この時点で、あなたの人生は勝利で彩られる。なんせ、大半の日本国民は本を出版した経験がないのだ。ナンバーワンよりオンリーワン。売れるか売れないかなんて些末な話で、むしろ金銭なんて下世話なもので上下を競うことから離れる権利を得たのだ。文化を消費するのではなく、創造する側に回ったという名誉は、年収1000万円よりもよほど希少性が高い。

 さて、本を出して作家になるというゴールは決まった。まず何をすべきか。パソコンを立ち上げ、主要な文芸賞の募集要項を探す……なんてことは絶対にやってはいけない。そういうのは、情熱と才能を持ち合わせた人間に任せておけば良い。文芸賞というのはペン一本で身を立てようという野望に満ちた、才気あふれる人たちが切磋琢磨する場だ。我々のような、最短経路でチヤホヤされることだけが目的の、なんの取り柄もない平凡な人間が立ち入っていい領域ではない。

 では何をやるべきか。あなたが向き合うのは原稿用紙でもワードでもない。SNSだ。XでもインスタでもTikTokでもYoutubeでもnoteでも何でもいい。とにかく、SNSで存在感を示そう。ジャンルはなんでもいい。フォロワーさえ増えれば、あとは出版社の方から「うちで本を出しませんか?」というオファーがやってくる。数ある出版社のうちから選べば良い。