半導体人材育成のオランダ技術系大学に厳しい目-米中対立で板挟み

AI要約

オランダの半導体製造装置メーカーASMLホールディングの主要な人材供給源となっている、アイントホーフェン工科大学が、米中対立の影響を受けている状況。

オランダ政府は、米国と中国の間で板挟みになりつつあることが示唆されており、半導体サプライチェーンを巡る争いが激化している。

ASMLは学生育成に積極的であり、大学に多額の寄付を行っている。中国人留学生や米中対立の影響も受けつつも、技術の発展に貢献している。

(ブルームバーグ): オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングの主要な人材供給源となっている、同国トップクラスの技術系大学が、半導体を巡る米中対立の矢面に立たされている。

「私はいつも米国人から、中国人留学生について質問を受ける」。アイントホーフェン工科大学のロバート・ヤン・スミッツ学長はぼやいた。ASML世界本部から約8キロメートルに位置する同大でインタビューに応じたスミッツ氏は、昨年、駐オランダ米国大使から、中国からの留学生の多さについて質問されたと明かした。

スミッツ氏のコメントは、高度な半導体製造に必要な機械や専門知識の主要供給源であるオランダに対し、中国の半導体製造の取り組みを阻止しようとする米政府からますます強い圧力をかけられている状況を反映している。

世界の半導体サプライチェーン(供給網)を巡る争いが激化する中、オランダ政府は同盟国である米国と、中国という主要な輸出市場との間で板挟みとなっている。今年、米国からの圧力を受け、オランダ政府はASMLの深紫外線(DUV)を使った液浸リソグラフィー(露光)装置の輸出制限を導入した。同社では2番目に高性能なカテゴリーに属する機械だ。ブルームバーグ・ニュースは1月、禁輸措置が発効する前に、米政府高官がASMLに対し、中国顧客への出荷予定の製品の一部をキャンセルするよう要請していたと報じた。

在オランダ米国大使館のシェファリ・ラズダン・ダッガル大使は、2023年のスミッツ氏との会談についてコメントを控えた。

スミッツ氏は、過去数年の中国人留学生に対する米国のビザ発給数に触れ、「中国人留学生には気をつけろとのメッセージを受けている。でも、米国の大学へ行くためのビザを、中国人留学生に大量に発行したのは誰か。 米政府だ」と指摘した。

ASMLは将来の従業員を育成しようと、アイントホーフェン工科大に多額の投資を行っている。5月には、同大に8000万ユーロ(約138億円)を寄付。博士課程の学生育成や、半導体研究に必要なクリーンルーム棟のアップグレードに充当される。同大には、研究用にASMLのリソグラフィー装置を収容するラボ棟がある。