迫る「2030年」熾烈さ増す航空人材の争奪戦 航空業界募る危機感

AI要約

航空業界が人材不足に直面し、パイロットの育成や採用に関する課題が浮かび上がっている。

国土交通省が様々な施策を実施しているものの、即戦力となるパイロットの育成には時間がかかる。

自衛隊出身のパイロットや他国の元軍人が人材供給源として注目されており、整備士の不足も深刻化している。

迫る「2030年」熾烈さ増す航空人材の争奪戦 航空業界募る危機感

人材不足で旅客機が飛ばせない。世界的な航空需要増大に伴い、安定運航を支える担い手が足りなくなる「2030年問題」に直面し、航空業界は危機感を募らせる。減便に追い込まれた航空会社もあり、航空人材の「争奪戦」が熾烈(しれつ)さを増す中、自衛隊パイロットのさらなる転身に期待が高まる。

国土交通省によると、国内線の旅客者数は9066万人(令和4年度)。国際線は3047万人(同)で、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ需要は回復しつつある。国際航空運送協会(IATA)は6月、2024年の世界の旅客数が約50億人に達し、過去最高になるとの見通しを発表した。

日本では令和12年ごろから現役パイロットの多くが定年を迎えるが、とりわけ成長著しい格安航空会社(LCC)は機長の約4分の1を60代が占めるなど厳しい状況が続く。平成26年には、最大手のピーチ・アビエーションが機長不足を理由に最大2千便の減便を余儀なくされた。

こうした事態を踏まえ、国交省は安定的に要員を確保するため、①パイロットの年齢制限を64歳から67歳に引き上げ②航空大学校の定員を1・5倍に拡大③学費負担の重い私立大生らを対象とした奨学金制度の創設④外国人や退職した自衛隊パイロットの資格取得制度の見直し-などを段階的に進めてきた。

だが、パイロットの育成には時間がかかる。機体の大きさや種類、用途に応じたライセンスの取得が求められ、旅客機の運航には定期運送用操縦士の資格も必要となる。航空各社は即戦力として外国人パイロットの採用に力を入れるが、採用後も定着するとは限らず、流動性がネックとなる。

飛行経験が豊富な自衛隊出身のパイロットも、人材供給ルートの一つとして注目される。ただ、民主党政権下で国家公務員の天下りが禁止され、防衛省が民間航空会社への再就職を自粛させた経緯もあり、元自衛官の転身は決して多くない。

海外の航空会社では元軍人が主要な人材供給源となり、足元を支える。国交省の担当者は「退職した自衛官は即戦力として期待できる。これまで以上に再就職しやすい環境を整える必要がある」としている。

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