北九州の名物チェーン・資さんうどんが東京進出を発表 後継者問題を乗り越えた“外様”の社長・役員が打ち出す「全国展開」の展望

AI要約

資さんうどんは北九州のソウルフードとも呼ばれる老舗うどんチェーンであり、1976年に創業された。創業者の大西氏は激戦区で生き残るために独自の出汁を開発し、その味が現在も受け継がれている。

2012年に創業者が病床に伏し、後継者問題が浮上。経営は福岡キャピタルパートナーズ、ユニゾンキャピタルに引き継がれた。現在の経営陣は出汁へのこだわりを強調し、味の継承を重視している。

創業者の味へのこだわりはうどんだけでなく、メニュー全体に行き届いており、幅広い世代に愛されるポイントとなっている。

北九州の名物チェーン・資さんうどんが東京進出を発表 後継者問題を乗り越えた“外様”の社長・役員が打ち出す「全国展開」の展望

 北九州のソウルフードとも呼ばれる老舗うどんチェーン「資(すけ)さんうどん」。創業者・大西章資氏が北九州市戸畑区に「資さん1号店」をオープンさせたのは1976年のことだった。長く北九州市を中心に、福岡市や関門海峡を隔てた山口県で営業していたが、創業者の後を継いだ経営陣は拡大路線に舵を切り、現在は九州の全県、山口県、岡山県、大阪府、兵庫県に69店舗を展開。そして、7月13日には東京進出を発表した。ただ、「ローカルチェーンの全国展開」に踏み出すまでには、様々な困難があったという。

 とんこつラーメンのイメージが強い福岡県は実はうどん人気も高く、創業者の大西氏は激戦区で生き残るために徹底的に出汁にこだわったという。2年がかりで試行錯誤を重ね、独自の出汁を開発。この味が、現在に至るまで資さんうどんの背骨となっている。

 黄金色の出汁は、大きく分類すれば関西風だが、風味は微妙に違う。出汁の味は少し甘めだ。麺は、とろけそうに柔らかい福岡うどんと、コシの強い讃岐うどんの中間といったところ。うどん以外にもカツとじ丼やカレー、おでんなど、メニューの数は100を超え、子供からお年寄りまでを幅広くターゲットにしたラインナップを揃える。ひとりで店に立ち寄り、ビールとおつまみだけの“ちょい飲み”に使う人もいるという。

 そうして北九州に根付いていた資さんうどんに大きな転機がおとずれたのは、2012年のことだった。カリスマ的創業者の大西氏が病床に伏して株式会社資さんの社長を退任し、後継者問題が浮上したのだ。

 その後、大西氏は2015年に他界。地元の福岡銀行などが出資する福岡キャピタルパートナーズが株式を取得するかたちで一旦経営を引き継ぎ、2018年に投資ファンドのユニゾンキャピタルに事業譲渡された。その時に招聘されたのが、代表取締役社長の佐藤崇史氏やCOO(最高執行責任者)の大井裕之氏ら現経営陣だ。

 社長の佐藤氏はソニー、ユニクロを展開するファーストリテイリングなどで様々な経験を積んできたが、広島県出身で北九州に縁があるわけではなかった。埼玉県出身でゼンショーホールディングスなど飲食業界などで豊富な経験を持つCOOの大井氏も、「実はこの会社に入るまで、私は九州にすら行ったことがありませんでした」と振り返る。そんな大井氏は、運営を引き継ぐ前に資さんうどんの何店舗かを見て回った時の驚きが大きかったという。

「まずは出汁へのこだわりですね。創業者の大西さんが長年かけて磨き上げてきた味が脈々と受け継がれているんです。経営者として、この味をより多くの人に届けたいと、強く感じました。味へのこだわりはうどんだけではありません。ちょっとしたサイドメニューにいたるまで、行き届いているんです」(大井氏)