「ど地銀経営」地元密着が生き残り戦略…温泉街や老舗支援「リスクあっても踏み込む」

AI要約

大分県中西部・くじゅう連山の山あいにある筋湯温泉街の旅館「白滝」で地域ビジョンプロジェクトの取り組みが紹介される。

大分銀行が地域ビジョンプロジェクトを通じて地域の課題解決と産業振興を支援し、地域密着型の経営を展開している。

地域商社の事例も紹介され、製造業や金属加工業への支援が地銀や地域商社によって進められている。

 大分県中西部・くじゅう連山の山あいにある筋湯温泉街の旅館「白滝」で6月下旬、大分銀行の営業担当者が経営者の赤峰誠さん(50)と石畳の改修状況についてやり取りしていた。

 大分銀は昨年から「地域ビジョンプロジェクト」と銘打って地域の課題を解決し、産業を振興する戦略を進めている。建物の老朽化が目立っていた筋湯温泉街一帯では同旅館を含め約20か所で設備の改修や建て替えをサポートし、関連融資は総額で約7億円に上る。

 赤峰さんは「日々の仕事に追われ、銀行の助言や支援がなければ動けなかった」と感謝する。プロジェクトを統括する大分銀の宮永潤平推進役は「我々が大分から逃げることはできない。たとえリスクがあっても踏み込む」と力を込める。

 大分銀にはかつて、市場が大きい在京の企業への融資を優先する時代があった。だが、金利競争が激しく、2010~16年に頭取を務めた姫野昌治氏は地元重視に転換。行内で「姫野ターン」と呼ばれ、大分県外での事業性融資額は09年度からの10年で1割減った。今年6月に頭取に就いた高橋靖英氏も「ど地銀経営」を掲げ、姿勢を継続する。

 地方銀行が地元密着で課題解決を重視する背景には、人口減少が深刻化すれば地域が衰退し、経営が脅かされるという強い危機感がある。対応を急ぐ地銀が経済活性化のために進めるのが、地域商社だ。

 山口フィナンシャルグループ(FG)などが設立した「地域商社やまぐち」は県産品の販路拡大に挑んでおり、今年1月には地元の酒類卸会社を買収。後継者不足に悩んでいた企業と、酒の卸売りに必要な免許を取得して販売を強化したい地域商社の思惑が一致した。商社は今後、製造拠点のグループ化も検討する。

 一方、ふくおかFGは地域商社で、製造業に特化した仲介事業に乗り出した。

 製造業は九州の域内総生産の3割を占める産業だが、特に小規模事業者が多い金属加工業では、高い技術を持ちながらも営業に割ける人員が少ないことに着目。地銀の情報網を駆使し、加工に対応できる工場のデータベースを作ることで、発注者と受注者を結びつける仕組みをつくった。