発売直後の「販売目標の◯倍受注」発表は人気のバロメーターじゃない! 大切なのは「その後の納車台数」にアリ

AI要約

新型車の受注台数が人気車の証明にはならず、実際の登録台数が重要である。

受注台数のみを公表することで人気をアピールするが、実際の販売台数が伸びないケースも多い。

ユーザーに対して不親切な方法で販売を行うと、優れた商品であっても評価されない。

発売直後の「販売目標の◯倍受注」発表は人気のバロメーターじゃない! 大切なのは「その後の納車台数」にアリ

 新型車が発売されたあと、1~2カ月を経過すると「受注台数が販売目標の○倍を超えた」という趣旨の報道発表をすることがある。メーカーとしては、人気の高さをアピールしているが、そのまま受け取ることはできない。

 その理由は、公表されているのが「登録(軽自動車は届け出)台数」ではなく「受注台数」になるからだ。いくら受注台数が増えても、実際の登録や届け出台数が少なく、ユーザーが納車を待たされたのでは褒められない。受注台数が多いなら、それをしっかり生産して、ユーザーに届けなければ意味はない。

 また、最近は受注開始時期の前倒しが激しい。納車を伴う「発売」の3~6カ月以上も前に受注を開始して、受注台数を溜め込み、その揚げ句に販売目標の数倍に達しても威張れない。

 たとえばマツダCX-60は、販売店では2022年4月25日頃から価格を明らかにして、予約受注を開始した。メーカーの発表では、予約受注の開始は6月24日とされているが、販売店ではその約2カ月前から予約受注を実施していた。開発者は「予約受注の、そのまた予約受注を行っていた」という。

 その結果、2022年9月にCX-60を正式発売した時点で、「月販計画台数(2000台)の4倍を超える8726台を受注」と報道発表された。「CX-60は販売が好調な人気車です!」と宣伝したわけだ。

 ところが2023年におけるCX-60の1カ月平均登録台数は1995台に留まり、月販計画台数の2000台に達しなかった。2024年1~5月の1カ月平均は、599台まで下がっている。ちなみに月販計画台数は、その車種が生産を終えるまでの平均計画台数だ。時間の経過に伴って売れ行きが下がることを踏まえると、発売直後は、月販計画を上まわらねばならない。それがCX-60は発売後早々に月販計画を大幅に下まわり、現時点では人気車とはいい難い。

 ホンダでは2022年6月に、現行ステップワゴンについて「発売後約1カ月で月間販売計画(5000台)の5倍を超える2万7000台以上を受注」と公表された。それが2023年の1カ月平均登録台数は3680台で、月間販売計画の5000台を下まわった。しかし、2024年1~5月の1カ月平均は、月間販売計画を超える5911台だ。今後の動向が注目される。

 以上のような具合だから「受注台数」の発表は、人気車の証明になり得ない。将来の需要予測も成り立たない。信じられるのは、実際の登録や届け出台数だけだ。納期を遅延させず、十分な台数を欲しいユーザーにしっかりと届けてこそ、本当の人気車になり得る。

 とくに最近は発売しながら受注を早々に停止させ、中古車価格を高騰させるなど、ユーザーに対して不親切な車種も急増している。これではデザインがカッコ良く、機能を充実させても、優れた商品とはいい難い。