アリナミン製薬を2400億円で米ファンドに売却…本体の武田薬品工業はウェバー社長で本当に良かったのか?

AI要約

武田薬品工業の経営状況や役員報酬、株価などについて紹介されている。

ウェバー社長の経営方針や批判、アリナミン製薬の売却に関する情報が含まれている。

外国人役員の報酬や武田の将来に対する懸念、株価の動向に関する論点が提示されている。

アリナミン製薬を2400億円で米ファンドに売却…本体の武田薬品工業はウェバー社長で本当に良かったのか?

【企業深層研究】アリナミン製薬(下)

 武田薬品工業の2024年3月期の有価証券報告書によるとクリストフ・ウェバー社長CEOの役員報酬は20.82億円(前年度比3.59億円増)、アンドリュー・プランプ取締役は11.54億円(同1.81億円増)、コンスタンティン・サルウコス前CFOが8.11億円(同1.20億円増)だった。

 アステラス製薬の岡村直樹社長が4.61億円、第一三共の真鍋淳会長CEOが3.86億円。これら国内勢と比べて突出している。

 24年3月期の役員報酬ランキングでもウェバーは3位だ。10位にアンドリュー・プランプが入っている。

 6月26日、大阪市内で定時株主総会を開き、ウェバーの社長続投が承認された。社長歴も10年が経った。

 株価や時価総額では第一三共が武田の上に位置する。今や武田は高収益会社でも薬品業界トップの株価・時価総額でもなくなった。

 株主総会では株主から「自己資本利益率(ROE)が低すぎる」と悲鳴に近い批判も出た。これに対してウェバーは「今の武田は規模と競争力を持つ真のグローバル企業だ」と反論した。

 ウェバーの社長就任にあたっては武田の創業家の関係者などが反対同盟を結成して反対した。240年の歴史を持つ老舗製薬会社に外国人社長が登場した衝撃はすさまじかった。15年、最高経営責任者(CEO)になり、ワンマン体制を確立した。

 シャイアーの買収で、世界の製薬ランキングで13位。現在、売上高の9割は海外であり、社員の9割が外国人である。とうの昔に実態は日本の会社でなくなっている。

 残念ながら、利益率は低い。20~24年3月期の平均ROEは4.02%(日経QUICK・ファクトセット調べ)。24年同期のそれは2.11%と、さらに悪化した。

 ウェバー帝国も10年が経ち、随所にほころびが見え始めた。

 利益とウェバーをはじめとする外国人役員の役員報酬が釣り合っていないとの批判が根強い。

 日経によると「武田と売上高が近い米イーライ・リリーや米アムジェンのトップの報酬は23年度で2000万ドル(約32億円)以上だが、純利益はリリーが52億ドル(約8300億円)、アムジェンは67億ドル(約1兆円)もある」。対する武田は1440億円に過ぎない。低すぎる。

■時価総額は中外製薬にも抜かれ…

 国内に戻る。時価総額で武田は第一三共だけでなく中外製薬にも抜かれた。第一三共の株価は10年前から約7倍になった。武田は1割近く下落した。

 主力薬の特許切れで24年3月期の連結最終利益は前期比54.6%減の大幅減益となった。

 ウェバーがトップで本当にいいのか。

 ウェバーは漢字の武田を絶対に使わない。いつもTakedaだ。特別にデザインしたローマ字のロゴを使っている。

 中興の祖、武田国男は今年6月8日、84歳で亡くなった。彼もウェバーの社長就任に反対していた。外国勢に食い物にされることを恐れたからだ。

 医療用医薬品に経営資源を集中するため、大衆薬部門のアリナミンを21年に米投資ファンドのブラックストーンに2400億円で売却した。

 1年間で、3500億円で転売するという、荒々しい会社転がしでブラックストーンは1100億円の利益を1年で得た。新たなオーナーになったMBKパートナーズは3500億円を出したが、「アリナミンの名前と実績があればアジア市場でさらに成長できる」と読んでいる。

 もっと上の地位にいてもいいはずなのに、とご本人は考えているが英語ができないばかりにくすぶっている(失礼!)日本社員が呟いた。

「本社も日本でなくなる。社名もシャイアー・ジャパンに変わってしまうのではないか。公用語が英語になったりはしないのか」

(有森隆/経済ジャーナリスト)