イギリスで深刻化する「富裕層の流出」、流入先で「日本も意外と人気」のワケ

AI要約

イギリスで富裕層が国外流出する背景と労働党の勝利が加速させる影響について

富裕層流出の主な理由や今後の動向について

労働党の課税強化政策が富裕層流出を増加させる可能性がある

イギリスで深刻化する「富裕層の流出」、流入先で「日本も意外と人気」のワケ

 イギリスで5日、総選挙が行われ、野党労働党が圧勝して14年ぶりの政権交代が決まった。これと同時に起きているのが、イギリスに住む富裕層(ミリオネア)の「国外流出」だ。労働党の勝利に伴い、富裕層への課税強化が見込まれているからだ。ただ、こうした選挙結果に関わらず、世界的に移住する富裕層の数は過去最高に達するとみられている。流出した富裕層はどこに向かうのか。意外かもしれないが、実は日本は流入国に数えられている。税率の高い日本がなぜ「流入国」なのか、世界各地で活発化する富裕層の移動、その理由と動向を解説する。

 イギリスから富裕層が大量に流出している実態が、新たな調査で明らかになった。Henley&Partnersが2024年6月に発表した「Henley Private Wealth Migration Report」で、2024年はイギリスから9500人の富裕層が純流出すると予測されている。

 この数字は、2023年の4200人から2倍以上に増加しており、過去最高を更新する見込みとなる。2024年に最大の純流出が見込まれているのは、1万5200人の中国。イギリスは、この中国に次ぎ、世界2番目の純流出国になる。

 かつてイギリス、特にロンドンは、世界の超富裕層にとって主要な移住先として人気を博していた。1950年代から2000年代初頭にかけて、ヨーロッパ本土、アフリカ、アジア、中東から多くの富裕層がイギリスに移住していたという。しかし、この傾向は約10年前から逆転し始めた。特にブレグジット後の2017年から2023年の6年間で、イギリスは合計1万6500人の富裕層を失ったとされる。

 イギリスからの富裕層流出の背景には、複数の要因が存在する。Henley&Partnersは、その主な理由として以下の点を挙げている。

・非居住者(非ドム)への課税強化

キャピタルゲイン税や相続税の高さ

テクノロジー分野における米国やアジアの台頭

ロンドン証券取引所の地位低下

医療システムの悪化

大都市における治安の悪化

 さらに7月4日に行われた総選挙は、労働党の大勝が事前にわかっており、富裕層流出を加速させている。

 労働党は公共サービスへの資金提供を強化するため、富裕層を対象とする課税案を表明しているからだ。具体的には、非居住者への課税強化、課税回避策の除外、私立学校への税制優遇措置の撤廃、非居住者による住宅購入への課税強化などが公約に含まれている。