DMMビットコイン、流出した「482億円」分を同等の暗号資産で補填。賠償金の税金はどうなる?

AI要約

DMMビットコインの不正流出問題と税務上の取り扱いについて説明されています。

税理士によると、補填が日本円で行われる場合は利確と見なされ課税の対象になるが、暗号資産で補填される場合は課税対象外とのこと。

また、暗号資産に限らず損害賠償金の場合、私生活上は非課税だが、個人事業主の場合は収入として算入されると述べられています。

DMMビットコイン、流出した「482億円」分を同等の暗号資産で補填。賠償金の税金はどうなる?

5月31日、暗号資産(仮想通貨)交換業を営むDMMビットコインは、ビットコインが外部へ不正に流出したと発表した。流出額は482億円相当で、グループ会社の支援のもと流出した顧客のビットコインを全額保証するという。

これまでも国内外で暗号資産の不正流出はたびたび起きている。2018年には、仮想通貨取引所大手のコインチェックで、顧客から預かっていた暗号資産「NEM(ネム)」が外部へ不正送金され、過去最大の流出額となった。

このときコインチェックは、NEMの保有者に対して日本円での返金対応をしたようだが、今回、DMMビットコインは不正流出した顧客に対してビットコインで返金すると発表した。

実は、このような金銭保証において、「日本円で補填される場合」と「仮想通貨で補填される場合」とでは、受け取った保証金に対して税金のかかり方が異なるそうだ。コインチェックの件では自身も被害にあった経験があるという、岩永悠税理士に話を聞いた。

●日本円での賠償金=利確したとみなされ課税の対象に!

「ビットコインなどの暗号資産が流出し、金銭補償が行われる際には、流出した暗号通貨が(1)日本円で補填される場合(2)暗号資産で補填される場合とで、税務上の取り扱いが異なります。

(1)流出した暗号資産が日本円で補填される場合

損害賠償金として支払われた金銭でも、強制的に利確(暗号資産を利益として確定)されたものとみなされます。

補填された日本円の金額が収入金額として計上され、失われたビットコインの購入価格が取得価格として計算されます。つまり、『収入金額ー取得価格=利益』として計算され、利益が一定以上出ているのであれば『雑所得』として確定申告が必要となります。

具体例として、100万円で購入した暗号資産が流出し、その補填として時価相当額150万円を受け取る場合、補填として受け取る150万円が収入金額となり、100万円が取得価格となります。この差額である50万円が利益となり、雑所得として課税対象となります。

(2)流出した暗号資産が同等の暗号資産で補填される場合

この場合、実質的には資産の移動がないとみなされます。

『失われた暗号資産の数量』と『補填される暗号資産の数量』が同じ数量であれば、投資家の資産の総額に変化がないとみなされるため、課税対象とならず税務上の処理は不要です。」

●私生活で受け取る賠償金や慰謝料は非課税だが・・・

ーー 暗号資産に限らず、たとえば事故で被害に遭い、賠償金を受け取った、というケースもあるかと思います。所得税法において、そのような損害賠償金はどのような扱いになるのでしょうか?

「所得税法上の損害賠償金として考える場合、以下の2パターンが考えられます。

(1)個人の場合(私生活上)

事件や事故に遭った際、被害者が治療費・慰謝料・損害賠償金・見舞金などを受け取ったとき、所得税は非課税となります。

(2)個人事業主の場合(事業所得や不動産所得など)

個人事業者が受け取る収益補償や必要経費を補填するために受け取る損害賠償金については、既に必要経費に算入された費用や、将来必要経費に算入される費用を補填するものですから、事業所得の総収入金額に算入することとなります。たとえば次のようなケースです。

・台風被害による店舗やアパートの補修費用や営業損害金など(不動産業・民泊業者など)

・レンタルスペース内の器物破損による補填金など(レンタルスペース運営業者)

損害を受けた資産が事業用資産の場合は、受け取る損害賠償金は非課税とはならず、事業所得の収入金額となります」

●当時の暗号資産流出の被害者として、セキュリティ体制に疑問を感じる

「仮想通貨取引所コインチェックが外部からのハッキング攻撃を受けたことにより、580億円相当の暗号資産『NEM』が盗難された『コインチェック事件』から約6年、また日本の暗号資産交換業者が被害を受けることとなりました。

私自身コインチェック事件の当事者であり、日本円での補填に怒りを覚えた被害者のひとりでもあります。私の場合は取得原価が高く利益は出ませんでしたが、多額に税金を支払った人は多数いると考えられるため、今回のDMMビットコインの補填の仕方には納得しています。

当初からなのかもしれませんが、暗号資産は投機の対象として、特にビットコインは総量が定められていることもあり、デジタルゴールドとまで言われています。投機の対象となるものの取引所たる場所が、いとも簡単にハッキングされ盗難に遭うという状況に少しあきれています。

 

価値があるものを取り扱っている業者としてのセキュリティの甘さは指摘せざるをえません。一方で、ハッキングにより銀行や証券会社から顧客の資金が流失したという事件はそうそう起きるものではありません。今一度、顧客の資産を預かる身としてのセキュリティ体制を考えてほしいと思います」

【取材協力税理士】

岩永 悠(いわながゆう)

アイユーコンサルティンググループ代表/税理士法人アイユーコンサルティング代表社員。

西南学院大学卒業。京都大学経営管理大学院 上級経営会計専門家(EMBA)プログラム修了。2007年中堅の税理士法人に入所。26歳で税理士登録後、国内大手税理士法人に入所し福岡事務所設立に参画。13年独立開業、15年法人化。「日本のミライに豊かさを」をビジョンに掲げ、税理士法人を母体に全国11拠点・総勢150名体制でグループを運営している。24年1月には事業承継専門部隊「承継アドバイザリー部」を設立。主な著書「事業承継を乗り切るための組織再編・ホールディングス活用術」(23年改訂版発刊)。

・事務所名 :

アイユーコンサルティンググループ

税理士法人アイユーコンサルティング

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