「京都が外国人観光客に絶対に媚びてはいけない理由」在日20年マッキンゼー元幹部が力説

AI要約

訪日外国人旅行が今まさにブームで、観光庁の統計によると過去最高の消費額を記録している。

外国人が日本の地方に魅力を感じる理由や、自然や温泉旅館など日本独特の要素について解説。

地方の魅力的な特産品や文化、音楽の響きなど、地域にしかない体験が外国人にとっても魅力的である。

「京都が外国人観光客に絶対に媚びてはいけない理由」在日20年マッキンゼー元幹部が力説

 円安の影響もあり、訪日外国人旅行が空前絶後の“沸騰”状態だ。京都などでは観光「公害」も叫ばれる中、インバウンド・ビジネスはどこへ向かうのか。マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナーを経て、ペイパル日本のトップを務めるピーター・ケネバン氏が解説する。【前後編の前編】(ペイパル日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン)

● 外国人から見た「わんこそば」の面白さ 未体験のインタラクティブ(双方向)活動

 日本のインバウンド需要が空前の盛り上がりを見せている。観光庁によると、2024年1~3月の訪日外国人の旅行消費額は1兆7505円で、四半期ベースで過去最高を記録した。

 訪日外国人が訪れる都市は、東京や京都ばかりではなくなっている。米紙ニューヨーク・タイムズが発表した「2024年に行くべき52カ所」で、日本から選ばれたのは山口県山口市。前年の同じ特集では、岩手県盛岡市が選ばれた。日本人の感覚からすると意外に感じるかもしれない結果だが、私には、外国人が日本の地方に惹かれるのは十分に納得できる。

 私は日本にもう20年以上住んでいて、ビジネスや観光でさまざまな地域を訪れてきた。例えば、訪問した岩手県北上市の工場で、せっかく岩手に来たんだから、と「わんこそば」を勧められてから、やみつきになってしまった。こちらが食べた瞬間に、お店の人がポンポンと、そばを入れてくれる。ダイナミックでインタラクティブ(双方向)なやり取りを、今まで食事で体験したことはなく実に面白く感じた。

 新幹線の北上駅で売っている「くるみゆべし」も、美味しくて好きになった。地方ごとに魅力的な特産品が数多くあるのも、文化の密度が濃い日本ならではの特徴だ。

● 自然のすぐそばに温泉旅館がある 安全に遊べるのも日本の長所

 日本の地方の魅力は、何と言っても自然だ。オーストラリア人の友人はラフティング(川下り)が趣味で、GoProで撮影した動画を見せてくれるのだが、彼によれば日本の急流はかなり良好なスポットらしい。海外からの旅行者はスキーやハイキングなど、アウトドアで体を動かす遊びを好む傾向があるから、日本はうってつけの旅行先だ。

 美しい自然ならば他の国にもあるが、日本ならではの長所がある。まずは、安全性だ。水上バイクやスノーモービルなどの機械を使う遊びは、時には事故の危険もあるが、日本ならばきちんとメンテナンスされているから、他国でやるより安心感がある。

 そして、なんと言っても、自然のすぐそばに温泉旅館などがあって文化的にも楽しめる。今、私の周りで日本に来る外国人の多くは、大自然でのアドベンチャーと、文化的なものの両方を求めている。それらを同時に味わうには、東京や大阪のような大都市よりも地方のほうが適しているのだ。

 ところで、私が大好きな地方都市は、長野県松本市だ。歴史のある町で温泉旅館もあるし、自然の中でハイキングも楽しめる。そばなどの食べ物も美味しい。だが、それだけではない。松本はバイオリンの指導者として高名な鈴木鎮一氏ゆかりの地で、毎年、夏季学校が開かれ、「スズキ・メソード」を習っている子どもたちが世界中から集まるのだ。

 その時期には、街を歩いていると、至るところから子どもたちのバイオリンの音色が響いてくる。もちろん、初心者もいるから上手い下手はあるが、それも含めてかわいらしい。私の娘もバイオリンを習っていたので、練習に参加したこともある。街全体がにぎやかな音楽の場に変わって、なんとも魅力的なのだ。