「業績好調」のマツダがタイ市場で抱える懸念、“日系の金城湯池”から生産撤退するメーカーも

AI要約

タイの自動車市場で日本車メーカーが販売台数を落としている中、中国メーカーの台頭や金融環境の冷え込みが影響している。

スズキはタイの工場を閉鎖し、SUBARUもノックダウン生産を廃止するなど、タイ市場の縮小に対応している。

タイの自動車市場は変化しており、日本車メーカーは新たな競争環境に適応する必要がある。

「業績好調」のマツダがタイ市場で抱える懸念、“日系の金城湯池”から生産撤退するメーカーも

 「タイに減速感が出ている。拡販が進むインドでカバーしないといけない」。ある大手部品メーカー幹部はそうため息をついた。

 自動車産業が集積し、“アジアのデトロイト”と呼ばれるタイ。日本車がシェアの約8割を握る“金城湯池”としても知られるが、そこで異変が起きている。

 調査会社マークラインズによると、タイ市場における2023年度(2023年4月~2024年3月)の累計販売台数は、トヨタ自動車が前年同期比8.9%減の26.7万台、いすゞ自動車が同36.9%減の13.6万台、日産自動車が同29.7%減の1.6万台と、日系メーカーの多くが台数を落とした。足元の4月も同様の傾向が続く。

 背景には、タイ市場そのものの冷え込みがある。2023年度の自動車販売台数は前年度比13.5%減の約72万台だった。金利上昇によって自動車ローンの審査が厳格化し、新車が購入しづらくなったことが原因の1つと指摘されている。

 中国メーカーが攻勢を強めていることも影響している。その代表格である中国EV大手・BYDの2023年度の販売台数は約3.5万台で、前年度の5949台から大きく躍進した。そうした結果、2022年(暦年)に86.0%あった日本車のシェアは、2023年には77.8%にまで低下している。

■スズキはタイの4輪車工場を閉鎖

 こうした市場環境下、6月7日にはスズキが、タイ南東部の4輪車工場を2025年末までに閉鎖することを発表した。2011年に工場を設立した際、小型車が伸びてくると読んでいたが、「期待していたほど伸びてこなかった」(広報担当者)という。

 SUBARUはタンチョン・グループ傘下企業との合弁会社で行っていたタイでのノックダウン生産を廃止することを決定した。当該工場ではこれまで、SUBARUからのライセンスに基づく生産が行われていた。今後も現地での販売は継続し、2025年以降は日本からの輸出に切り替える。