最近の自動車ディーラーは、顧客の利益を考えて販売しているのか? YouTube「マツダディーゼル動画」騒動から考える

AI要約

ディーラーには「その道のプロ」というイメージがあるが、顧客の知識は一般的に少ない。特に燃費を重視する傾向が強まっており、マツダのディーゼル車が注目されている。

ディーゼルエンジンは燃費がよいというイメージがあるが、かつては有害物質を排出するエンジンとされていた。しかし、クリーンディーゼル車の登場により環境面が改善されている。

ディーゼル車のイメージが変化した経緯や現在の状況を考えると、マツダのディーゼル車は顧客のニーズに合っていると言える。

最近の自動車ディーラーは、顧客の利益を考えて販売しているのか? YouTube「マツダディーゼル動画」騒動から考える

 ディーラーの顧客は、営業マンが「その道のプロ」であり、クルマのことなら何でも知っていると思っている。そのため、彼らに聞けば的確なアドバイスが得られると感じている。実際のところはどうなのか。今回は、一部で物議を醸しているマツダのディーゼルエンジン搭載車を取り上げて、この疑問を投げかけてみたい。

 ディーラーに限らず、多くの顧客は一般的に商品の知識が少ないが、熱心な顧客は購入前に商品を徹底的に調べ、購入後も取扱説明書を熟読して使い方を学ぶ。しかし、これは少数派である。

 なぜなら、彼らは仕事や家庭など、さまざまなことで忙しく、調べたり学んだりする時間的余裕がないからだ。そのため、彼らは「その道のプロ」にアドバイスやレクチャーを求める。

 筆者(宇野源一(元自動車ディーラー)がディーラーに勤務していた10年ほど前でも、新車を購入する顧客は機能よりも

「燃費」

を重視する傾向があった。 当時はガソリン価格も今ほど高くなかったが、ガソリン価格が徐々に上昇している現在では、その傾向はさらに強まっている。

 燃費のよいクルマといえばハイブリッド車(HV)を思い浮かべる人が多いが、燃料費の安いディーゼルエンジン車を購入する人も一定数いる。

 ガソリン車は燃費が悪いが、燃費のよいHVは高価で選択肢が少ない。その点、マツダのディーゼル車を含む車種ラインアップは、顧客のニーズに合っているのかもしれない。

 マツダはここ数年、国産メーカーで唯一、ディーゼルエンジン搭載乗用車をラインアップしてきた。日産もクリーンディーゼルエンジン搭載車を販売していたが、後継モデルはイメージを大きく変え、HV専用車となった。

 ここで簡単にディーゼルエンジンについて触れておこう。

 ディーゼルエンジンは軽油を燃料とし、ガソリン車よりも燃費がよいというイメージが定着している。しかし、かつては“有害な黒煙を吐き出すエンジン”としてクルマに搭載されていた。

 1999(平成11)年、当時都知事だった石原慎太郎氏が記者会見でディーゼル車の排ガスが入ったペットボトルを掲げ、

「こんなものをみんな吸っているんだよ」

と発言したのをきっかけに、東京都で「ディーゼル車NO作戦」キャンペーンが始まり、環境が変わった。

 詳細は省くが、これにより有害物質の排出が少ない「クリーンディーゼル車」が市場に現れた。約25年前の話なので、若い世代にとっては

「ディーゼル車 = うるさいエンジンで有害物質を排出する」

というイメージは少ないだろう。