社会保険料を考えると、6月は残業をするべき? いつもより減らすべき? 電気代高騰で家計が苦しいのですが……

AI要約

6月の電気と都市ガス料金が増加するため、残業を考える社員もいるが、増えた収入が社会保険料の負担増につながる可能性がある。

「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の目的や値引き単価、社会保険料の算定方法について詳細に解説。

標準報酬月額の定時決定方法を示し、6月からの電気・都市ガス料金増加に対する社会保険料の影響も考慮。

社会保険料を考えると、6月は残業をするべき? いつもより減らすべき? 電気代高騰で家計が苦しいのですが……

6月利用分の電気と都市ガスの料金は、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の終了に伴い負担が増します。そこで「6月から残業を増やして、少しでも収入を得よう」と考える方もいますが、6月の給与収入が増えると、9月以降1年間の社会保険料の負担が増える可能性があります。

今回は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の概要と、会社員の社会保険料の算定基礎となる「標準報酬月額」について解説します。

1.事業の目的

政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」は、ロシアによるウクライナ侵略などの世界情勢を背景とした燃料価格の変動に伴う電気・ガス料金の高騰から国民生活を守るため、電気・ガス料金の単価から一定額を値引きすることで、料金負担を軽減する対策です。

2.値引き単価

本事業は2024年5月使用分で終了しますが、その値引き額は2024年4月分までと2024年5月分で異なり、下表のとおりとなっています。

(※1を基に筆者作成)

3.値引き額の例

環境省の資料(※2)によると、1世帯が1年間に消費したエネルギーは、全国平均で電気が4175 kWh、都市ガスが203m3となっています。この資料を基に、月間の使用量が電気(低圧)350 kWh、都市ガス17m3である家庭の値引き月額を計算すると、下表のとおりとなります。

(※1を基に筆者作成)

従って、前述した2024年4月使用分に比して、6月使用分の電気料金の負担は1225円、都市ガス料金の負担は255円も増えることになります。

1.社会保険料の算出方法

会社員の社会保険の保険料月額は、以下のとおり「標準報酬月額」に厚生年金と健康保険ごとに定められた保険料率をかけて求められ、事業主と折半して支払います。

毎月の社会保険料額=標準報酬月額×保険料率

なお「標準報酬月額」とは、会社員が受け取る給与(基本給のほか、残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定したもので、年金や健康保険など社会保険料の計算に用います。標準報酬月額と等級は、健康保険の場合は1等級5万8000円から50等級139万円、厚生年金が1等級8万8000円から32等級65万円となっています(※3、4)。

2.定時決定とは

「標準報酬月額」は、1年に一度以下のとおりの手順で見直されますが、これを「標準報酬月額」の定時決定といいます(※3)。

まずは、4月・5月・6月の報酬の総額を3で除した額を「報酬月額」とします。そして標準報酬月額表(下図参照)から「標準報酬月額」と等級を決定し、9月から翌年の8月までの各月の標準報酬とします。

図表