円安の流れは変えられず、日米金利差の開きを市場は意識…「介入効果」2か月で消失

AI要約

米国の好景気を背景に、円安・ドル高基調が続く東京外国為替市場で、1ドル=160円台を記録。政府・日銀の介入で円安の流れを変える手段は限られている。

海外市場での動向を引き継ぎ、米金利の先高観が広がる中、日米金利差の開きが意識され、円安が進行。ボウマン理事の発言が円安に弾みをつけた。

政府・日銀は過去に行った為替介入で約9・8兆円を投じたが、介入効果は消え、円安水準は更新された。外貨準備は200兆円近いが、介入の効果の持続は不透明。

 27日の東京外国為替市場の円相場は前日の海外市場の円安・ドル高基調を引き継ぎ、一時、1ドル=160円73銭をつけた。市場では米国の好景気を背景に、米金利が当面は高止まりするとの見方が強く、日米の金利差の開きが意識されている。政府・日本銀行が再び円買い・ドル売りの為替介入に踏み切るとの観測もあるが、円安の流れを変える手段は限られている。(佐藤寛之、遠藤雅、鞍馬進之介)

 1ドル=160円台をつけたのは、26日夜の海外市場での取引だった。同日午後5時に大方の取引を終えた東京市場では、159円台で売り買いが交錯した。しかし、取引の場がロンドン市場に移った午後6時半過ぎに「心理的節目」とされる160円を突破すると、円安の進行が加速した。

 その後に取引が始まったニューヨーク市場も流れを引き継ぎ、一時は1986年12月以来、約38年ぶりとなる160円88銭まで下落。161円台が目前に迫った。

 円安進行に弾みがついたきっかけの一つが、25日にロンドンであった講演での米連邦準備制度理事会(FRB)のミシェル・ボウマン理事の発言だ。ボウマン氏は「インフレ(物価上昇)沈静化が止まったり、逆方向に動いたりすれば、利上げをためらわない」と述べ、米金利の先高観が広がった。

 日米の金利差が開いたままになれば、投資家が運用に有利なドルを買って円を売る動きは止められず、政府・日銀に残された対策は少ない。

 政府・日銀による円買い・ドル売りの為替介入があったとみられる4月29日は、1ドル=160円台まで円安が進んだタイミングで、海外市場で介入が実施されたとみられる。5月2日にあったとみられる再介入を含め、約9・8兆円分の資金が投じられたが、2か月もたたずに「介入効果」は消え、円安水準は更新された。

 円買い・ドル売り介入の原資となる外貨準備高は、5月末時点で200兆円近い。財務省で通貨政策を担う神田真人財務官は、「介入資金は、(外貨準備だけではなく)限界はないという認識だ。24時間体制で必要な時には対応する」と強調するが、介入の効果が持続するかは不透明だ。