「再エネ5重投資」で電気代は上がるばかり 政府は再エネにかかる本当のコストを示すべきだ

AI要約

再エネ政策による再エネ賦課金の増加により、家庭や企業に重い負担がかかっている。

太陽光発電と風力発電は本質的に2重投資であり、火力発電所や原子力発電所の代替にはなり得ない。

バッテリーを利用して再エネを活用する際にも家庭や一般国民が補助金で負担していることが問題となっている。

 電気代の高騰が国民生活を直撃している。その元凶は「再エネ最優先」なる日本政府の政策だ。主には太陽光発電と風力発電で、いずれも自然まかせの変動性がある。その欠点を補うために、日本政府は実に5重もの投資をしている。再エネにかかるコストを正確に示さずに国民に負担を強いる政策には問題があるのではないだろうか。

 (杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

■ 「再エネ賦課金」のコストは序の口

 「再エネ最優先」という政策のためには、まずは再エネ本体に投資しなければならない。その原資として「再エネ賦課金(正式名称=再生可能エネルギー発電促進賦課金)」が電気代に上乗せされて徴収されている。

 2024年度は、この再エネ賦課金が引き上げられて、世帯当たりで年額1万6752円になると政府が発表した(1カ月の電力使用量が400kWhのモデル)。

 国民からは怒りの声が上がっている。

 ところがこれは氷山の一角に過ぎない。

 1万6752円というのは、電気代に上乗せされて家庭が支払う金額だ。けれども、それ以外に、企業が支払う金額はもっと大きい。

 政府資料によると、再エネ賦課金は1kWhあたり3.49円となっているので、年間の販売電力量7707億kWh(2024年度想定)を掛けると、総額は2兆6897億円になる。日本の人口を1億2000万人として、1人あたりなら2万2000円超、標準的な3人世帯なら6万7000円ほどにもなる。

 つまり、賦課金の大半は企業が負担する。ただし、企業が負担するといっても、その分給料が減ったり、物価が上がったりして、結局最終的には家庭が負担する。

 家庭の電気料金は総務省家計調査によると3人世帯であれば毎月1万円程度、年間12万円程度だから、事実上、電気料金は、再生可能エネルギー推進のために、すでに5割増しになっている。

■ 太陽光発電・風力発電は本質的に2重投資

 ところが、これだけ投資しても、火力発電所や原子力発電所をなくすことはできない。

 日照が乏しいとき、風が吹いていないときでも、電気は必要だからだ。つまり太陽光発電、風力発電は、本質的に2重投資となるのだ。

 太陽光・風力の価値は、日照や風がある間だけ発電して、火力発電所の燃料を節約できる分しかない。しかも、一斉に大量に発電すれば、今度は停電などのトラブルを避けるため、出力を抑制せざるを得ない。

 日本の太陽光発電の設備利用率は17%しかない。年間83%は、火力など他の発電に頼っている。

 太陽光・風力には「バックアップ電源が必要だ」という言い方がよくされるが、これは「エコひいき」が過ぎる。普通の感覚では「83%」をバックアップとは言わない。本当のところは、電力供給を担っているのは火力などの電源であり、太陽光は気まぐれに発電しているに過ぎない。

■ バッテリーで3重投資に

 再エネ利用促進の一環として、家庭で大きな太陽光発電を置き、電気を使いきれない時間にはバッテリーに貯めておいて、日照がない時間に使うという手法がある。

 これについて「補助金があれば、建築主にとっては採算がとれる」という宣伝をよく見る。だが、補助金の原資は誰が負担しているのか。一般国民が電気料金や税の形で負担しているのである。

 仮に採算が合うといっても、それは家庭用の電気料金制度の隙を突いているからだ。晴れた時には電気を使用しないというならば、本当は、電気料金の内訳として、もっと固定費は高く、従量料金は低く設定しないといけない。

 この理由は、以下の思考実験でわかる。