「さらば堅実経営」パワー半導体ロームの乾坤一擲、2025年の世界シェア首位を目指して怒濤の投資

AI要約

ロームは急成長を続ける独立系半導体メーカーで、過去には堅実な経営で知られていたが、最近異例の大規模な投資を行っている。

最も強みを持つ分野であるパワー半導体市場での地殻変動により、ロームは新たな材料である炭化ケイ素(SiC)への投資を進めている。

SiCは高い電圧に耐えられる特性を持ち、EVなどの分野での需要が増加している。

「さらば堅実経営」パワー半導体ロームの乾坤一擲、2025年の世界シェア首位を目指して怒濤の投資

 東芝、日立製作所、NEC――。大手総合電機が背負ってきた“日の丸半導体”の凋落を横目に、成長を続けてきた独立系半導体メーカー。今や国内ではパワー半導体の雄となった、そのロームが大勝負に出ている。

 シリコンサイクルの浮き沈みに翻弄される半導体業界で、ひときわ「堅実経営」が知られてきたローム。自己資本比率は85%前後を誇り、実質無借金を続けてきたが、2021年頃から異変が起きている。

 2024年度までの3年間で、ブチ上げた設備投資計画は約4800億円。それ以前の3年間と比べると、およそ3倍となる大増額だ。加えて2023年には、東芝の非公開化への参画に3000億円を拠出。2024年3月末時点で、自己資本比率は65.3%まで下落した。

■パワー半導体の「地殻変動」

 東芝への3000億円は当初、同社としては異例の大規模な借り入れでまかなったが、今年4月には返済するための転換社債を発行した。行使されれば1株利益の希薄化につながる懸念から同社の株価は急落。1年前には3000円を超えていた株価は、現在は2000円前後で推移している。

 なりふり構わぬ異例の投資に突き進む背景にあるのは、パワー半導体市場での生き残りを懸けた「地殻変動」だ。

 ロームが強みを持つパワー半導体は、電力の制御や変換などを行う機能を持つ。家電や自動車、産業機械などに幅広く使われ、三菱電機や富士電機など日本企業が世界的に強みを持つ分野だ。

 近年、この分野で起こっているのが、急激な「次世代パワー半導体」への需要シフト。半導体を造るための材料そのものが、従来のシリコン(Si)から炭化ケイ素(SiC)へとシフトしている。この地殻変動を受けて、ロームは投資へのアクセルを踏み込んでいる。

 SiCはシリコンよりも高い電圧に耐えられ、省電力性にも優れるという特徴を持つ。一方でシリコンより高価なため、市場は限られていた。しかしテスラが自社EVに採用したことでEVへの搭載が加速。これから一段の成長が見込まれている。