なぜ「異常な円安」が続くのか? 原因は日米金利差? そんな“簡単ではない”深刻問題

AI要約

急激な円安の原因は日米金利差の急速な拡大にあるが、日本の自然利子率も考慮すべきである。

円安によって日本経済は深刻な影響を受け、貧困化や購買力の低下などの問題が生じている。

日銀は金利を上げることで円安に対処すべきだが、そう簡単にはいかない状況である。

なぜ「異常な円安」が続くのか? 原因は日米金利差? そんな“簡単ではない”深刻問題

 この数年間の急速な円安は、日米金利差の急速な拡大によるものだ。ただ、この説明だけでは不十分であり、なぜ日銀が金利を上げられないかを明らかにする必要がある。ここで注目すべきは「自然利子率」である。これを読み解くと、日本が行き着く最悪のシナリオが考えられる。

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 日本円は、この数年間で急激に価値が低下した。2021年秋ごろまでは1ドル105~110円の間で推移していたのだが、2022年3月から急速に減価し、2022年10月には150円に近づいた。その後円高になったが、再び円安となり、150円を超える円安が続いている。

 これが日本に深刻な問題をもたらしたことは間違いない。輸入物価の高騰により、国内物価が高騰した。日本人の購買力が著しく減少し、海外の高価なものを買えなくなった。そして、留学できない、外国からの労働者が日本に来ない、などの問題が発生している。日本は急速に貧しくなったのだ。

 一体なぜこのようなことが起きたのか? その原因は何か? ここから抜け出すにはどうすれば良いのか? それとも、これは一時的な現象に過ぎないので、あまり深刻に考える必要はないのか?

 円安の原因は日米間の金利差だ。2022年春から円安が進んだのは、米国が政策金利を急速に引き上げ、日本が追随しなかったので、日米間の金利差が拡大したためだと説明される。

 たしかにそのとおりである。この説明は正しい。ただし、これだけでは不十分だ。

 金利差が円安をもたらすのは、「円キャリー」と呼ばれる取引による。これは投資資金を円で借りて調達し、それをドル資産に投資する取引だ。これによって金利差分だけの利益を得られる。

 ただし、将来時点で円高が進めば、円資金を返却するときに損失が発生する。したがって、利益を得られるためには、将来円高にならないことが必要だ。

 日本銀行は、2022年12月まで金融緩和策を見直す予定はないと明言していた。また2023年4月から総裁が交代して金融政策の正常化に取り組むとしたが、当面は金融緩和を継続するとした。これは、円キャリー取引の利益を保証したようなものだ。このために、円キャリー取引を誘発し、円安が進んだのだ。

 日米金利差によって円安が生じ、そして円安が問題をもたらしているのであれば、「日銀が金利を上げることによってそれに対処する」のは、当然、必要とされることのように思われる。

 しかし、問題はそれほど簡単ではない。