M&A100件以上を手掛けたコンサルが断言…「高確率で失敗する企業買収」の決定的特徴

AI要約

短期間で既存事業の強化や事業ポートフォリオの転換、業績の向上に寄与する「M&A」。今や上場企業のみならず中堅・中小企業も活用している経営手法ですが、M&A実行前に想定していたシナリオと異なる結果になる事例が少なくありません。

実をいうと、M&Aは企業規模にかかわらず、実施時のプロセスがほぼ同じである。譲渡対価が何百億円の案件でも、何千万円の案件でも、基礎となっているM&Aの進め方は一緒である。

しかし、名だたる日本企業が米国の名門企業を多額の資金で買収する「劇場型」M&Aは過去のものとなった。四半世紀以上が経過した今では、中堅・中小企業にも経営戦略や経営技術として定着した。

M&A100件以上を手掛けたコンサルが断言…「高確率で失敗する企業買収」の決定的特徴

短期間で既存事業の強化や事業ポートフォリオの転換、業績の向上に寄与する「M&A」。今や上場企業のみならず中堅・中小企業も活用している経営手法ですが、M&A実行前に想定していたシナリオと異なる結果になる事例が少なくありません。成否の分岐点はどこで生じるのか? 100件以上のM&Aコンサルに携わってきた丹尾渉氏の著書『M&A成長戦略』(監修:株式会社タナベコンサルティング 戦略総合研究所、ダイヤモンド社)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

実をいうと、M&Aは企業規模にかかわらず、実施時のプロセスがほぼ同じである。譲渡対価が何百億円の案件でも、何千万円の案件でも、基礎となっているM&Aの進め方は一緒である。

このようなM&Aの源流は1980年代末にさかのぼる。1985年の「プラザ合意」で急激に円高が進み、それを契機として日本企業の対外直接投資が急増。豊富な「ジャパン・マネー」を背景に、特に米国での大型買収が世を賑わせた。ソニー(現・ソニーグループ)によるコロンビア・ピクチャーズ・エンターテインメントの買収(1989年9月、48億ドル=当時約6700億円)、三菱地所によるロックフェラーグループの買収(同年10月、8億4600万ドル=同約1200億円)、松下電器産業(現・パナソニックホールディングス)によるMCA(現・NBCユニバーサル)の買収(1990年11月、61億3000万ドル=同約7800億円)などである。

しかし、名だたる日本企業が米国の名門企業を多額の資金で買収する「劇場型」M&Aは過去のものとなった。四半世紀以上が経過した今では、 前回記事 でも述べたように中堅・中小企業にも経営戦略や経営技術の一つとして定着した (⇒関連記事:『こんなはずでは…。2億円で〈同業買収〉を決めた金属加工メーカー、売り手企業の「まあ大丈夫だと思いますよ」を鵜呑みにした結果』) 。

一方、上場企業に限らず、中堅・中小企業がM&Aマーケットに参戦するなかで、さまざまな課題も浮き彫りになっている。その一つが、M&Aは手段だという観点を忘れてしまうプレーヤーが多いということである。