土星の環、2025年春に消える

AI要約

1610年、ガリレオ・ガリレイが土星の環を発見。環の正体が判明するのは1655年。

2025年春から一時的に土星の環が見えなくなる。直線の傾きが地球の目の高さと一致するため。

2032年には最も厚い環が観測可能。一直線の環は土星の衛星の発見に役立つ。

土星の環、2025年春に消える

 太陽系第6惑星であり2番目に大きい惑星である土星の環を初めて発見したのは、1610年のガリレオ・ガリレイだった。しかしガリレオは、当時はこれが環であることには気づかず、「土星の両側に耳のようなおかしな物体がついている」と考えた。これが環であることを確認したのは、約半世紀後の1655年のオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスだった。それから20年後には、イタリアの天文学者ジョバンニ・カッシーニが土星の環は1本ではなく複数本あることを発見した。その後、環は土星の象徴になった。

 太陽系で最も派手な土星の環が、2025年春からしばらくの間消える。本当に消えるのではなく、私たちの視野に入らなくなる。土星の環の直線の傾きが地球の目の高さと正確に一致するためだ。

 土星の赤道面を囲んでいる環は厚さが非常に薄い。最も薄いところは10メートルほどしかない。したがって、環と同じ目の高さでみると、環が紙のように薄くなり、目立たなくなる。

 大きく7本に分かれている土星の環は、現在の地球からみると9度傾いている。しかし、2025年になると、直線の傾きがほぼ0度になる。環を目の高さでみることになるわけだ。この時に環を地球からみると一直線の形になるため、識別するのは難しい。地球と土星は、およそ15年ごとに、このような位置関係に近づくことになる。

■地球との位置・角度が変わるため…15年ごとに発生

 一直線の形の環が周期的に発生するのは、公転軌道上の地球と土星の位置が変わるためだ。地球の公転周期は1年だが土星は29.4年だ。

 1995年と2009年にもこうした現象があった。今度は2025年3月23日にこのようなことが発生する。環はその後ふたたび大きくなり、2025年11月に再度消える。その後は環が徐々に明確になっていき、2030年代初期には今よりもさらに広く鮮明にみえる。したがって、少なくとも今後数年間は、これまで以上に良好な環を観測する機会を得ることは難しい。

 また、土星の環は、ある時は下から上に、ある時は上から下に動く。太陽を1周回るごとに首を縦に振るわけだ。地球は23.5度、土星は26.7度傾いた状態で軌道を回ることによって生じる現象だ。

 2025年の一直線の形の環は、下から上に動く途中に形成される。土星が太陽の後方にある時は南面が、前方にある時は北面がみえる。しかしこの時期は観測が非常に難しい。土星が太陽から10度しか離れていないためだ。

 環が消えた土星を鮮やかにみるためには、2038年まで待たなければならない。この時期は2039年まで3回にわたり環平面の通過現象が起きる。

■2032年には最も厚い環を観測可能

 一直線の形の環は土星観測の楽しみを下げる代わりに、土星の衛星を見つけるにはよい環境を提供する。環から出る反射光が弱まるためだ。タイタン、エンケラドゥス、ミマスを含む13個の衛星がこの一直線の形の環の期間中に発見された。

 この現象は、同じくガリレオが初めて発見した。しかし、ガリレオはその理由を知らなかった。ガリレオは、1612年に土星の両側に耳のようについていた物体が消えたことを目撃し、それについて「驚くべきことであり、まったく予想できないこのような事件について、何と言えばいいのか分からない」と記した。

 反対に、環の美しい姿を満喫できる機会も、周期的に訪れる。2032年になれば環が面を上げ、下から平たい環が明確にみえることになる。

■土星に降り注ぐ環の雨…数億年後には本当に消える

 しかし、このような周期的な錯視現象も、永遠には見物できない見込みだ。土星の環が実際に徐々に消えているからだ。

 氷やホコリ、岩石で構成された環は、土星の表面から7万キロメートル離れた地点から始まり、最大で28万キロメートルの地点まで分布している。環を構成する粒子は、きわめて小さいものから電車ほどの大きさのものまで様々だ。2019年の研究結果によると、土星の環を構成する粒子は、重力に引き寄せられ、土星の表面に向かって落ちている。これを「環の雨」と呼ぶ。

 天文学者らが土星探査機「カッシーニ」の収集データを分析した結果、45億年の歴史の土星に比べ、環の歴史はこれよりはるかに若い4億年前に始まり、今後3億~4億年後には消える可能性があると予測している。派手な土星の環は、すでに寿命の半分が過ぎているわけだ。

 科学者らは現在の土星の環は1秒あたり最大3トンの氷の微粒子を失っていると計算した。およそ30分ごとにオリンピックサイズのプールを満たせる量だ。

 土星ほどは大きくはないが、木星、天王星、海王星にも環がある。科学者らは土星の事例に照らしてみると、他の惑星の環もかつては土星と同じくらい派手だった可能性があると推定している。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )