《私生活をすべて盗聴》していたイラン政府の尋問官が女性人権活動家にした「恐ろしすぎる脅迫」

AI要約

イランの獄中で受賞したナルゲス・モハンマディが、イランの過酷な拷問の実態を告発。

イランでは思想犯・政治犯として逮捕されるだけで、脅迫、鞭打ち、性的虐待、拘禁生活などが待ち受ける。

ジェンダーギャップ指数最下位の日本でも、自由への闘いが他人事でないことを意識すべき。

女性活動家のレハネ・タバタバイがエヴィーン刑務所で収監された経験を告白。

政治活動やオンラインメディアへの参加で禁固刑を受けた彼女が、IRGCによって容赦なく追及された過去を明かす。

独房の孤独と恐怖、そして暖房のない過酷な環境が描かれる。

良心の自由を求める活動家たちが置かれるイランの過酷な状況や拷問の実態が露わになる。

日本でも理解すべき他者の苦悩を、現実を通して考える機会を提供するこの書籍の価値。

組織への批判としての書籍刊行の意義も示唆される。

《私生活をすべて盗聴》していたイラン政府の尋問官が女性人権活動家にした「恐ろしすぎる脅迫」

イランでは「好きなことを言って、好きな服を着たい!」と言うだけで思想犯・政治犯として逮捕され、脅迫、鞭打ち、性的虐待、自由を奪う過酷な拷問が浴びせられる。2023年にイランの獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディがその実態を赤裸々に告発した。

上司の反対を押し切って担当編集者が日本での刊行を目指したのは、自由への闘いを「他人事」にしないため。ジェンダーギャップ指数が先進国最下位、宗教にも疎い日本人だからこそ、世界はつながっていて、いまなお闘っている人がいることを実感してほしい。

世界16カ国で緊急出版が予定されている話題作『白い拷問』の日本語版刊行にあたって、内容を一部抜粋、紹介する。

『白い拷問』連載第31回

『「ひたすら我慢したが、本当に許せなかった」...イランの独房で「性的に侮辱」されたイランの女性活動家の「最悪の拘禁生活」』より続く

語り手:レハネ・タバタバイ

レハネ・タバタバイはジャーナリスト、政治活動家、イラン参加戦線(改革派の政党)の支持者である。2016年1月12日より1年間、エヴィーン刑務所の女性房に収監されていた。1年の禁固刑に加え、政治政党や組織への参加と、オンラインを含むメディアでの活動を2年間禁じられた。彼女への訴訟はIRGCによって起こされ、容疑は2014年の選挙時に国民青年本部の一員であったことと、シャフレコルド(イラン西部の町)で開かれた改革派の若者集会に参加したというもの、そしてサイード・ジャリリとモハマド・バゲル・ガリバフ(2005年から2017年までのテヘラン市長)をフェイスブックで侮辱したというものだった。レハネはそれまで3回逮捕され、エヴィーン刑務所の女性房に入れられた経験がある。初回は2010年、2回目は2013年の冬で、当時はイランのジャーナリストの多くが拘束され、ついには裁判所が「上訴禁止令」を出すに至った。3度目の逮捕は2014年6月20日で、反体制的なプロパガンダをした罪で6ヵ月間拘禁された。この容疑は2010年にIRGCに逮捕されたときのものと関係があった。

連れて行かれたのは、エヴィーン刑務所の2A棟だ。

独房の大きさは普通の部屋と同じくらいで、なかを歩くことができた。天井には2つの窓がついていたけれど、空は見えなかった。室内の照明は3つあり、昼間は1つ、夜は3つ点いていた。トイレは室内にあり、ドアで仕切られていた。

暖房はなく、通気口から熱い空気が流れ込んできたものの、耳障りな音がするので消してほしかった。部屋には4~5枚の軍用毛布があり、絨毯が敷かれた床は清潔だった。囚人が何か頼み事をするときと、看守が朝昼晩の食事を持ってくるとき以外、ドアが開くことはない。お茶は朝と夕方の2回出され、毎日2回、朝と夕方に20分ずつ外気に当たるために連れ出された。

当初、その棟にいるのは私だけで、あたりは静まりかえり、完全な孤独に包まれていた。「この部屋で自分に何かあっても、看守のいるところから遠いから誰も何も気づかないだろう」と思った。そのせいで、この先なにが起きるのかと、いっそう怖くなった。