中国軍機〝領空侵犯〟真の狙い 自衛隊機は「警告射撃」の検討をすべきだった 中国のSNSで「報復だ」エスカレートに警戒を

AI要約

中国軍機が日本の領空を侵犯した初の事案が発生。中国は領空侵犯を否定するも、意図的な行動の可能性が浮上。

中国軍機の侵犯は対応能力の試金石と、政権移行期の隙を狙った挑発行為の可能性が指摘されている。

また、海上自衛隊の護衛艦が過去に中国領海に入ったことをきっかけに、中国側が意趣返しの可能性も考えられている。

中国軍機〝領空侵犯〟真の狙い 自衛隊機は「警告射撃」の検討をすべきだった 中国のSNSで「報復だ」エスカレートに警戒を

【ニュース裏表 峯村健司】

中国人民解放軍のY9情報収集機が26日午前、東シナ海上空の日本の防空識別圏に侵入したのを自衛隊が確認した。航空自衛隊・新田原基地(宮崎県)のF15戦闘機と、同・築城基地(福岡県)のF2戦闘機が緊急発進(スクランブル)して、日本の領空に近づかないように警告したが、情報収集機は長崎県五島市の男女群島沖の南東側で旋回をしていた。

そして、午前11時29分ごろから2分間、男女群島沖約22キロの領空を侵犯した。その後も、同諸島の南東沖上空を旋回し、午後1時15分に中国の方向に戻ったという。

中国軍機が日本の領空を侵犯したのは初めてのことだ。これについて、中国外務省報道官は翌27日の会見で、「中国はいかなる国の領空も犯す意図はない」と釈明した。

だが、情報収集機の航路や速度からみて、故意に領空侵犯した可能性が高いと筆者は分析している。

情報収集機の速度は戦闘機よりも遅く、中国軍機の航行には中国独自の衛星測位システム「北斗」が使われており、航路を外す可能性は低いからだ。

では、中国側の真の狙いは何だろうか。筆者は2つの目的があったと推察する。

1つは、日本側の対応能力を探る狙いだ。長崎県をはじめ九州には、中国が「台湾併合」に向けた軍事行動をとった場合、自衛隊と米軍の重要な拠点がある。長崎県の佐世保基地には米海軍の強襲揚陸艦が配備されているほか、今回スクランブル発進した新田原、築城両基地は戦闘機の出撃拠点となる。意図的に領空侵犯をしたうえで、日本側の反応や対処を見極める狙いがあったのだろう。

岸田文雄首相が9月の自民党総裁選への不出馬を表明して、「レームダック(死に体)」の状態となっている。こうした政権移行期を中国側は「権力の空白」と過大評価して、相手国を挑発する傾向がある。総裁選レースに世論の関心が向いている日本の間隙を突いた可能性があるとみている。

もう1つが、海上自衛隊の護衛艦が中国領海を航行したことへの「意趣返し」の可能性だ。中国東部浙江省の沖合を航行していた海自護衛艦「すずつき」が7月4日午前、一時、中国の領海内に入った。防衛省関係者によると、護衛艦は中国軍の訓練監視をしていたところ、誤って進入したという。