【社説】「未来世代」の権利に呼応した「気候訴訟」韓国憲法裁が判決

AI要約

政府が未来世代のための温室効果ガス削減目標を定めないことは国民の基本権侵害であり、憲法裁判所が改正を命ずる判断を下した。

憲法裁は2030年の削減目標のみを設定している現行法に問題があり、2050年までの炭素中立を達成するための具体的な措置が必要だと指摘した。

ドイツの判決を引き合いに出し、政府による積極的な対策を促す中、原子力発電の拡大を疑問視する声が上がっている。

【社説】「未来世代」の権利に呼応した「気候訴訟」韓国憲法裁が判決

 政府が未来世代のための温室効果ガス削減目標を定めていないのは国民の基本権を侵害する行為だ。このような憲法裁判所の判断が下された。2030年までの削減目標を規定しているのみの現行法を、その後の削減目標も定め、未来世代の基本権を保護するよう改正せよ、との判断だ。政府は憲法裁の判断を重く受け止め、未来世代に気候危機を押し付けることのないよう、直ちに行動に移すべきだ。

 憲法裁は29日、小学生のハン・ジェアさん(12)ら青少年と市民団体が提起した「気候訴訟」憲法訴願事件で、炭素中立基本法の一部条項の改正を命ずる憲法不合致決定を下した。同条項は2030年の温室効果ガス排出量を2018年の排出量を基準として40%削減するとしているが、2031年以降は何の目標値も設定していない。パリ協定では、2050年までに炭素中立(カーボンニュートラル)を達成することになっている。請求人たちは、このようなやり方では地球の平均気温の上昇を産業化以前に比べて摂氏1.5~2度高い水準に抑制することを目指すパリ協定は守れないと主張したが、政府は各年の目標値をあえて明らかにしなくてもよいと主張した。憲法裁は、政府のこのような態度は国民の基本権の保護のために最小限の措置を取らなければならないという「過少保護禁止」原則に違反していると判断した。特に気候危機は未来世代に対してより致命的な影響を及ぼすため、いかなるかたちであれ目標値を提示しなければならないというのだ。

 今回の憲法裁の決定は、ドイツ連邦憲法裁判所が2021年に下した判決と趣旨が同じだ。ドイツ憲法裁は、パリ協定の目標を達成するために、2030年以降はより短期間内に急激に温室効果ガスを削減しなければならないと判決した。ドイツ政府は直ちに後続措置を取った。削減目標値を上方修正し、炭素中立の時期も2050年から2045年に前倒しした。炭素削減技術の開発のために50億ユーロ(約7兆4000億ウォン)を投資した。韓国政府は見習うべきだ。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に樹立された炭素中立履行計画を努めて揺さぶろうとしている。温室効果ガス削減目標で産業界にかかる負担を軽減し、その軽減分は原子力発電の拡大などで代替するという。温室効果ガスの排出量が最も多い産業部門の削減目標値を縮小し、原発を増やすことが炭素中立なのか。原発の拡大は、未来世代にさらに負担を転嫁するものだ。今回の憲法訴願を請求したハン・ジェアさんは訴訟中、「権利は私にある」と堂々と主張してきた。政府はこの言葉を深く肝に銘じなければならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )