「地球市民」と「華人」の間で揺れ動く…様々なところにルーツを持つ人々に共通する「問い」とは

AI要約

北極圏からアフリカ、モーリシャスまで、世界中に華人経営の中華料理店が存在する。その背後には、華人のアイデンティティを考える深い思いがある。

著者クワン氏と訳者斎藤氏の対談では、ドキュメンタリー作品や本から華人の心情に迫ろうとしていることが伝わってくる。

「地球市民」としての意識を持ちながらも、自身が華人であることを忘れず、アイデンティティを探求する旅を続けるクワン氏の姿が浮かび上がる。

「地球市民」と「華人」の間で揺れ動く…様々なところにルーツを持つ人々に共通する「問い」とは

北極圏にある人口8万人にも満たないノルウェーの小さな町、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国・マダガスカル、インド洋の小国・モーリシャス……。世界の果てまで行っても、華人経営の中華料理店はある。彼らはいつ、どのようにして、この土地にたどりつき、なぜ、どのような思いで中華料理店を開いたのか。そんな疑問を抱いて、世界に離散する華人の象徴とも言うべき中華料理店を訪ね歩き、一国一城の主や料理人、家族、地元の華人コミュニティの姿を丹念にあぶり出したのが、関卓中(チョック・クワン)著、斎藤栄一郎訳『地球上の中華料理店をめぐる冒険(原題:Have You Eaten Yet?)』だ。

旅をしながらドキュメンタリーフィルムを撮り、それを書籍化した著者のクワン氏。

1年の半分を海外で過ごしながら、翻訳家・ジャーナリストとして仕事をこなす訳者・斎藤氏。

旅と食と言葉をテーマに、著者と訳者の対談記事をお届けする。

『地球上の中華料理店をめぐる冒険』連載第28回

『食はあくまで「表のテーマ」に過ぎない...著者が本当に伝えたかった、誰も知らない「アイデンティティ」の物語』より続く

斎藤:ドキュメンタリーにも本にも、クワンさんの旺盛な好奇心と鋭い視点が感じられます。定番の質問が、「あなたは自分が何人と思っているのか」「故郷はどの国か」「子供には同じ華人と結婚してほしいか」。どれも非常にシンプル、それでいて深淵な問いです。

クワン:私自身もそうですが、イエス・ノーで単純に答えられるものではありません。華人の揺れる心の奥底をえぐり出したいと思っていました。

斎藤:華人だけでなく、いろいろな背景を持つ移民、異人種間の結婚で生まれた人たちに共通する問いかもしれませんね。

クワン:私は「地球市民」という言葉が好きで、それは旅をしながら仕事をしている斎藤さんと、私の共通点だと思っています。でも、同時に私はやはり華人でもあるんです。華人たちはそれぞれ見解は異なりますが、アイデンティティを考えながら生きているのでしょう。