砂入博史監督にも「オキナワより愛を込めて」にも見いだされる、「出会えてよかった」という心地よさ

AI要約

第27回富川国際ファンタスティック映画祭が終わり、疲れた筆者は秋の扉を開くDMZ国際ドキュメンタリー映画祭を待っていた。

NYU Steinhardt School of Culture, Education, and Human Developmentの日本人教授である砂入博史監督が、欧州の評壇で絶賛される活躍を見せていた。

ロサンゼルスタイムズとのコラボレーションでアメリカアカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞した「ラストリペアショップ」という作品についてのエピソードも語られた。

砂入博史監督にも「オキナワより愛を込めて」にも見いだされる、「出会えてよかった」という心地よさ

時計の針を約1年前に戻してみよう。筆者は少し疲れていた。

日本映画アドバイザーとして迎えた第27回富川国際ファンタスティック映画祭が終わった。韓国の国際映画祭の中で最も多い本数の日本映画が出品され、昨年は海外でのフォーラムで東宝、東映、TBSなど日本のメジャープロダクションが集まる異例な「歴史的事件」もあった。手塚眞さんをはじめとする友達のみんなから「ホストの役目を成功裏に果たしたと評価されたので、一息入れてもいいだろう」と余裕な気分で秋の扉を開くDMZ国際ドキュメンタリー映画祭を待っていた。そして、韓国にある中央大学校演劇映画学科時代にドキュメンタリーを教えてくれた恩師のオㆍジョンフン監督が副執行委員長として赴任した感慨深い年でもあった。その中でサーチライトㆍピクチャーズとの「ロサンゼルスㆍタイムズ」のコラボレーション責任者(EP)として、今年のアメリカアカデミー短編ドキュメンタリー賞受賞作の「ラストㆍリペアㆍショップ」を製作していたソウルメイトのナニーㆍウォーカーから紹介したい人がいるという連絡を受けた。それにうれしくも、その人が「日本人」だというのだ。

砂入博史監督――。アメリカの名門美術大学であるNYU Steinhardt School of Culture, Education, and Human Developmentにはめずらしい日本人の先生というだけでなく、パフォーマンスアート、インスタレーション、写真、造形芸術にビデオアートに至るまで、文字通りの「トータルクリエーター」として日本人のみならず、アジア人クリエーターのプライドとして崇敬に値するキャリア。そのような彼が、ロカルノ国際映画祭などをはじめ、欧州の評壇で絶賛されたフランスのドキュメンタリー作家のシルベインㆍジョージ(Sylvain George)、シネマドゥレエルの観客賞に輝くスイスのヤミーナㆍジュタート(Yamina Zoutat)などと共にコンペ部門で競合していた。主に欧米で活躍しており、大衆的にそこまで関心が高くないドキュメンタリーのジャンルの特性上、国内であまり報道はされなかったが、明らかに2023年の世界のドキュメンタリー映画界で挙げられる話題に違いなかった。

ナニーの旧友というから、自分にも良い友人になるだろうと思ったが、経歴だけを考えると「世界中の大家」とも言えるくらいの人物との遭遇だった。約束をしたインダストリーㆍプログラムのオープニングデーのレセプションが、秋の夕立が降った日の夜に始まったこともあるだけに、真のドラマチックな出会い。彼の第一声が聞こえてきた。「若い方ですね!」