「ワンタンスープ」がマダガスカルで朝食の定番に!?中華料理を通して知る「世界の食文化」が面白い

AI要約

著者の関卓中氏が世界中を旅して中華料理店と華人を訪ね歩く『地球上の中華料理店をめぐる冒険』は、中華料理の普及やローカライズを探る興味深い物語が展開される。

作品では、各地で現地の食文化と中華料理の融合や差異が描かれ、中華料理の普遍性や受容性が浮かび上がる。

中華料理の広まりや普及には、低価格で受け入れやすい特性が影響しており、世界中で愛される理由が垣間見える。

「ワンタンスープ」がマダガスカルで朝食の定番に!?中華料理を通して知る「世界の食文化」が面白い

北極圏にある人口8万人にも満たないノルウェーの小さな町、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国・マダガスカル、インド洋の小国・モーリシャス……。世界の果てまで行っても、華人経営の中華料理店はある。彼らはいつ、どのようにして、この土地にたどりつき、なぜ、どのような思いで中華料理店を開いたのか。そんな疑問を抱いて、世界に離散する華人の象徴とも言うべき中華料理店を訪ね歩き、一国一城の主や料理人、家族、地元の華人コミュニティの姿を丹念にあぶり出したのが、関卓中(チョック・クワン)著、斎藤栄一郎訳『地球上の中華料理店をめぐる冒険(原題:Have You Eaten Yet?)』だ。

旅をしながらドキュメンタリーフィルムを撮り、それを書籍化した著者のクワン氏。

1年の半分を海外で過ごしながら、翻訳家・ジャーナリストとして仕事をこなす訳者・斎藤氏。

旅と食と言葉をテーマに、著者と訳者の対談記事をお届けする。

『地球上の中華料理店をめぐる冒険』連載第26回

『どこで食べても安くておいしい中華料理...世界中を飛び回ったからこそ語れる、コスパのウラにある笑えない「事情」』より続く

斎藤:この作品では、国際感覚あふれるクワンさんが、中華料理店とそれを支える華人たちを求めて世界を旅し、行く先々での中華料理との出会いを描いています。

クワン:思わぬ土地で本場さながらの中華料理に遭遇して舌を巻きました。

斎藤:クワンさんは美食家でもありますね。

クワン:料理上手でおいしい中華料理を作ってくれる母に育てられたおかげです(笑)。いろいろな国の中華料理はそれぞれにおいしくて、そこはぜひ本を読んでいただきたいのですが、一番の中華料理は家庭料理だと思います。イスタンブールに行ってもご飯や春巻きは食べられますが、家で作るようなちょっとしたおかずは難しい。妻がオランダ人なので、家では私が簡単な中華料理を作っています。

斎藤:日本にも町中華と呼ばれる日本流中華がありますが、本の中では世界各国、現地の食文化の影響を受けて、ローカライズされた料理も紹介されています。

クワン:折衷料理は面白かったですね。私に言わせると、似て非なる中華料理。ニューヨークのピザがイタリアのピザと違い、日本のラーメンが中国の麺料理とは違うようなものです。

斎藤:東アフリカのマダガスカルで、ワンタンスープが朝食の定番になっているのも面白いエピソードでした。

クワン:怪しげな茶色っぽいソースが加わるインド式中華など、現地の好みというのもあると思います。私は中華料理では魚の姿蒸しが好物ですが、ノルウェーだと頭がついた魚は「気持ち悪い」と人気がないらしい。

斎藤:それでもなお、中華料理が世界で食べられているのはなぜでしょう?

クワン:先ほども言った低価格であること。そして受け入れやすく、イノベーションも起こしやすいからでしょうね。実は、カナダの寿司教室に通ったことがあるんです。主婦向けのものでしたが、実際に握ってみて感じましたよ。寿司よりチャーハンのほうが、世界に広げやすい、とね(笑)。

斎藤:確かに、チャーハンには包容力があります(笑)。いろんな国のチャーハンがあるし、そもそも中国の中でもチャーハンは地域ごとに違う。魚料理もさまざま。そうした違いを発見していくだけでも、わくわくする食の旅行記でした。