日本がオーバーツーリズムを嘆くのは訪日観光客がうらやましいから 「安い」と言われる屈辱感

AI要約

日本でインバウンド観光が回復する中、オーバーツーリズムが懸念されている。

日本経済は厳しい状況にあり、日銀の政策決定には賛否両論がある。

日本経済の脆弱性が観光業で特に顕著に表れている。

日本がオーバーツーリズムを嘆くのは訪日観光客がうらやましいから 「安い」と言われる屈辱感

訪日観光客が戻ってくるのを待ち望んでいたはずなのに、インバウンド消費が回復しつつあるいまの日本では、オーバーツーリズムを嘆く声が目立つ。この背景には、コロナ前とは異なる経済事情を経験している日本人の複雑な心境があると、英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は指摘する。

日本は、訪日客で自国が賑わう現状を喜びつつも、オーバーツーリズムを憂慮しはじめた。

訪日外国人用と、それより安価な地元住民用の価格を設定する二重価格制度についても、「妥当だ」「いや差別だ」「むしろ自滅を招くものだ」と、活発な議論が巻き起こっている。

この一方、政府が長らく同じ政策を維持し続けたせいで、かつては身軽だった日本人の海外旅行はコロナ以前のわずか6割に留まる。

膠着状態にあった日本経済は、いま大きな危機に直面している。自国の通貨である円と貿易の脆弱性が露呈したのだ。

7月の日経平均株価の高騰と、同月末におこなわれた日本銀行の金融政策決定会合は日本経済に混乱をもたらした。

だが、このときの日銀の態度は久しぶりに明確かつ誠実なものだった。物価高に伴う賃金上昇という好循環が起きていること、前回の利上げによってこうした状況が生まれるというデータの裏付けがあったことなどに言及し、政策金利をさらに0.25%にまで引き上げると発表したのだ。

2人の金融政策委員がこれに反対し、うちひとりは「経済状況が改善していると示すデータはあるのか」と、率直に疑問を呈した。今回の利上げは、「後に、近年の日銀の政策のなかで、最も議論を呼んだと評価されるかもしれない」と指摘するアナリストもいる。

投資銀行UBS日本地域担当のチーフエコノミストは、「この決定には非常にがっかりした」と述べ、日本経済はさらに不安定化するかもしれないと予測した。

穏健派や、不意打ちを食らった人たちの指摘には一理ある。せいぜい「微温」ぐらいにしか改善していないものがまた冷えてしまうようなことを、なぜあえてするのだろう。国内総生産(GDP)から見た日本経済は、間違いなく低迷している。賃金上昇は限定的で、取るに足らない程度だ。需要主導型インフレが起きる兆しはないし、工業生産も不調だ。

定量化はしにくいが、日本経済の脆弱性を示す兆候は他にもあり、特に顕著にあらわれているのが観光業だと言える。