前例なき米大統領選「EUや豪州とスクラムを」神戸大・簑原俊洋教授 奈良正論懇話会詳報

AI要約
バイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、米大統領選の行方が急変した。バイデン氏が6月のテレビ討論会や7月のトランプ暗殺未遂事件により退陣論が浮上した経緯。次の候補として注目されるハリス副大統領についての期待と可能性。
前例なき米大統領選「EUや豪州とスクラムを」神戸大・簑原俊洋教授 奈良正論懇話会詳報

近づく米大統領選をテーマに、奈良市の奈良ホテルで7月22日に開かれた奈良「正論」懇話会の講演会。講師の認定NPO法人インド太平洋問題研究所理事長の簑原俊洋・神戸大大学院法学研究科教授は、「リマッチの行方は?~2024年米大統領選とアメリカの現状」と演題を設定していたが、開催当日朝に飛び込んできた「バイデン大統領の選挙戦撤退表明」のニュースを受けて急遽(きゅうきょ)さらなる情報の収集と分析を進め、最新の知見を参加者に提供した。講演の主な内容は次の通り。

■バイデン氏辞退

米大統領選の流れを大きく変える重大なニュースが今朝(7月22日)届き、演題に掲げたバイデン大統領とトランプ前大統領の「リマッチ」ではなくなってしまった。今回はつくづく、「前例なき大統領選」だ。

まず、6月のテレビ討論会。9月頃から3回にわたり、聴衆を入れて超党派の委員会が主催するのが通例だが、今回はテレビ局主催の無聴衆で行われた。バイデン氏は目の焦点が定まらず、虚偽を並べ立てるトランプ氏に有効な反論もできず、彼自身、自分が何を言っているか分からなくなっているようだった。

この討論会でバイデン氏がすべきことは「あと4年間、大統領を全うできる」というアピールだったが、それができず退陣論を勢いづかせてしまった。

次いで、7月のトランプ氏暗殺未遂事件。これも選挙の行方を大きく変えた。トランプ氏自身は宗教に無関心だが大いに利用した。大統領候補受諾演説でも「私は神によって守られた」と強調。これでトランプ陣営に弾みがつき、民主党側に勝利の可能性があるとすれば、バイデン氏が亡くなるか辞退するかしかないと私は思っていたが、辞退となった。

相手がバイデン氏なら間違いなく勝てると思っていたトランプ陣営が、次の候補と想定したのはハリス副大統領(注…今月6日に民主党が正式指名)。彼らが最も嫌がっていた展開だ。

もしハリス氏が勝利すれば米国で初めて、女性でアジア系の大統領。民主党らしい、米国の「前進」を象徴する結果となる。

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