「あれが僕の父さんだ!」息子を号泣させたウォルズ副大統領候補の演説と、米紙の批判

AI要約

副大統領候補のウォルズが不妊治療の苦しみや中絶権について演説を行った。

民主党と共和党の立場の違い、ウォルズの不妊治療経験と中絶問題の関連性が示唆された。

米国人の中絶に対する意識や政治的立場についての調査結果も紹介された。

「あれが僕の父さんだ!」息子を号泣させたウォルズ副大統領候補の演説と、米紙の批判

8月21日、副大統領候補でミネソタ州知事のティム・ウォルズが、民主党全国大会(DNC)で指名受諾演説をおこなった。

ウォルズは演説のなかで、妻のグウェンとともに経験した不妊の苦しみにも言及している。2人は7年もの不妊治療の末に現在23歳である娘のホープを授かり、その次に、現在17歳のガスが生まれた。

「ホープ、ガス、グウェン、きみたちは私のすべてだ。愛している」

そう語った父の演説を聞き、会場にいたホープは指でハートを作った。ガスは拍手しながら号泣し「あれは僕の父さんだ!」と叫んだ。

不妊治療というプライベートな経験をウォルズが語ったことには、今回の選挙でポイントの一つとなっている「リプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)」が関係している。

米連邦最高裁は2022年6月、女性の人工妊娠中絶権は合憲だとした「ロー対ウェイド」判決を覆した。これにより、各州が中絶問題をめぐる独自の法律を制定できるようになった。

以降、民主党支持者が多い州は中絶へのアクセスを拡大し、共和党支持者の多い州は中絶を制限している。

リプロダクティブ・ライツには、中絶のみならず、ウォルズ自らが経験した不妊治療なども関係している。ウォルズは、体外受精と生殖医療へのアクセスを保護する必要性を主張してきたのだ。

演説で、彼は次のように語っている。

「私たちは全力を尽くす。それこそが前に進む方法だ。それこそがドナルド・トランプの時代を終わらせる方法だ」

「そうすることが、労働者が大切にされ、医療を受け、家を持つことが当然の権利となり、政府が皆さんの寝室に立ち入らない国を作ることに繋がる」

共和党は中絶を受けにくくする政策を進め、また、不妊治療を支援することに反対してきた。一方で民主党は、子供を産むか産まないかを選択する権利は国民の自由であるべきだとし、共和党を批判している。

そうした背景もあり、ウォルズは自分の経験を明かしたわけだが、これに疑問を持つ人たちもいる。というのも、不妊治療の制度と共和党の主張に関して、誤解を招く表現をしているからだ。

米紙「ニューヨーク・タイムズ」のコラムニストは「ウォルズが自身の不妊治療の経緯について語ったことは称賛する」と前置きしつつ、次のように述べている。

「だが、共和党員が禁止しようとしていない治療法まで禁止したがっているように勘違いさせる表現には、違和感を覚える」

演説を聞いた人たちは、共和党が禁止すべきだと主張しているIVF(体外受精)によって、ウォルズ夫妻が子供を授かったと感じたかもしれない。しかし彼らが実際に採用したのはIUI(人工授精)であり、これに関しては、共和党は反対していない。

米「アクシオス」から意見を求められ、ハリス陣営の広報担当者であるミア・エレンバーグは、「知事は不妊治療について一般的に理解されている省略表現を使用している」と答えている。

中絶に対する米国人の意識について、米誌「フォーブス」がさまざまな調査の結果をまとめている。

ギャラップ社の世論調査によると、5月時点で米国人の85%は、中絶は一定の状況下では合法であるべきだと考えているという。

そして6月に実施されたAP通信とNORCの世論調査では、70%が「中絶はすべての場合、またはほとんどの場合に合法であるべきだ」と考えていることがわかった。

また、調査会社「ピュー研究所」によると、中絶が合法であることを支持する共和党員は41%であるのに対し、民主党員は85%だった。