全面戦争を避けたいイランに、汚職疑惑を抱えるネタニヤフが「悪夢の引き金」を引く

AI要約

イスラエルがイランの首都テヘランの政府関連施設で親イランのイスラム組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤを暗殺したことに対する報復が懸念されている。

ハニヤ暗殺は中東情勢を不安定化させ、中東全域規模の戦争が起きる可能性が高まっている。

イスラエルがイランとの応酬の一環として行ったハニヤ暗殺、これにより両国間の緊張が高まっている。

全面戦争を避けたいイランに、汚職疑惑を抱えるネタニヤフが「悪夢の引き金」を引く

イランの最高指導者アリ・ハメネイがイスラエルに「厳しい罰」を与えると公言している。7月31日にイスラエルがイランの首都テヘランの政府関連施設で親イランのイスラム組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤを暗殺したことに対して報復を行うというのだ。【グレン・カール(本誌コラムニスト・元CIA工作員)】

イスラエルは、昨年10月7日にハマスがイスラエルを攻撃して約1200人を殺害したことを受けて、ハマス幹部の全面的な掃討を誓っていた。

しかし、ハニヤ暗殺は、イスラエルとイランの間で続いてきた応酬の一環という側面もある。イランがハマスをかくまい、戦闘員を訓練し、資金援助していることを受けて、イスラエルは今回の行動に出たのだろう。

ハニヤの暗殺は、ただでさえ混沌状態にある中東情勢をいっそう不安定化させ、中東全域規模の戦争が起きる現実味を強めたと言える。

そのような戦争が始まれば、イランおよびイランの代理勢力──ヒズボラ、ハマス、フーシ派、ガザ地区の「イスラム聖戦」、イラクの親イラン勢力など──と、イスラエル、そしておそらくはアメリカが戦うことになる。

そして、少なくともシリアとレバノンも戦争に巻き込まれることになるだろう。

ハニヤ暗殺にイランがなんらかの報復を行うことはほぼ間違いない。しかし皮肉なことに、イランがどのような行動を取るかを決めるのは、イランの宿敵であるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。

もしネタニヤフがガザにおける停戦でハマスと合意すれば、イランはイスラエルおよびイスラエルの権益に対する慎重な秘密工作を行う道を選ぶ可能性が高い。

一方、ネタニヤフがガザでの戦闘を継続するのであれば、イランは近くイスラエルに対して大がかりな軍事攻撃を行うだろう。その際は、ヒズボラなどの代理勢力を使って攻撃させる可能性が高い。

イスラエルの軍や情報機関の上層部では停戦を主張する声が強まっているが、ネタニヤフは戦闘を続けてきた。その背景には、自身の汚職疑惑から逃れたいという思惑もある。

イランが大規模な軍事攻撃を行えば、イスラエルとレバノン、そしておそらくはシリアとイランも、軍事、経済、政治、社会に壊滅的な打撃を被るだろう。

このほかに、イランは核開発計画を加速させるという選択肢もある。これは、挑発的ではあるが、直ちにイスラエルに直接的な行動を取るものではない。