習近平は「言うだけ番長」…中国の進める台湾統一を「上策、中策、下策」のシミュレーションで考えてみる

AI要約

中国共産党が台湾統一戦略を展開しており、孫子の戦略思想に基づいて行動している。

台湾では親中派と独立派の対立が続いており、中国は様々な手段で台湾の影響力を強化しようとしている。

台湾有事は日本有事とも関連があり、中国の台湾侵略は上策、中策、下策によって進められている。

習近平は「言うだけ番長」…中国の進める台湾統一を「上策、中策、下策」のシミュレーションで考えてみる

孫子は、「謀を以て敵を破るのが上策、軍事作戦での勝利は中策、直接の軍事衝突や凄惨な犠牲を伴う戦闘は下策だ」と言っている。孫子の末裔たちはいま、この基本に沿って台湾に戦争を仕掛けている。

「孫子曰く。凡そ兵を用いるの法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之れに次ぐ。軍を全うするを上と為し、軍を破るは之れに次ぐ。旅を全うすると上と為し、旅を破るは之れに次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之れに次ぐ」

中国共産党の台湾統一戦略は、この孫子の戦略思想のもと着実に遂行されている。中国の進める台湾侵略の「上策・中策・下策」を、日本を代表する中国ウォッチャーである国際政治評論家・宮崎正弘氏が解説する。

※本記事は、『悪のススメ―国際政治、普遍の論理』より一部を抜粋編集したものです。

「台湾有事は日本有事」だと安部晋三元首相は言い残した。

孫子の末裔たちの国を戦後このかた80年近く支配する中国共産党の台湾統一戦略を、上策・中策・下策で推測してみよう。

「上策」とは武力行使をしないで、台湾を降伏させることである。なにしろ「世界最先端の半導体メーカー=TSMCをそのまま呑みこむのだ」と中国の「ワル賢い」指導層が豪語し、メディアやSNSを駆使し、威圧、心理的圧力を用いている。

台湾議会(立法院)は2024年1月の選挙で親中派の国民党が多数派となり、議長は統一論を説く韓国瑜となった。台湾政治も総統は独立派、議会は統一派が多数というねじれである。中国の思う壺である。

悪質な政治宣伝と情報戦で、その手段がSNSに溢れるフェイク情報、また台湾のメディアを駆使した情報操作作戦だ。台湾には中国共産党の代理人がごろごろ、中国の情報工作員は掃いて捨てるほどウヨウヨしている。軍のなかにも中国のスパイが這入り込んで、重要な軍事機密を北京へ流している。

「軍事占領されるくらいなら降伏しよう」という台湾の政治家はいないが、「話し合いによる「平和統一」がよい」とする意見が台湾の世論では目立つ。危険な兆候だ。平和的統一の次に何が起きたか?

南モンゴル、ウイグル、チベット、そして現在の香港の悲劇をみよ。

中策は武力的威嚇から局地的な武力行使である。台湾政治を揺さぶり、気がつけば統一派が多いという状態を固定化し、軍を進めても抵抗が少なく、容易に台湾を呑み込める作戦だ。その示威行動が、台湾海峡への軍艦派遣や海上封鎖の演習、領空の偵察活動などで台湾人の心理を麻痺させること。また台湾産農作物を輸入禁止するなどの経済戦争も手段として駆使している。すでに金門島では廈門(アモイ)と橋をかけるプロジェクトが本格化した。

「中策」としては金門島の占領あたりまで進む可能性がある。にもかかわらず2024年4月1日に、中国入りした馬英九・元台湾総統は、学生団を率いて9日間、中国各地を親善訪問。出発にあたって台湾では「馬英九は売国奴」「中国に利用されるイデオット」などのプラカードを掲げ反対する人たちが空港近くなどで抗議行動を展開した。

「下策」は実際の中台戦争である。この場合、アメリカのハイテク武器供与が拡大するだろうし、国際世論が中国批判の声を上げると、ロシアの孤立化のような状況となる。また台湾軍は練度が高く、一方で人民解放軍は士気が低いから、中国は苦戦し、泥沼の長期戦となる。

中国へのサプライチェーンはばっさり寸断され、また台湾とは海峡を隔てているため、兵站が脆弱になる。長期戦となると、中国軍に勝ち目はない。だからこそ習近平は強がりばかりを放言し、実際には何もしない「言うだけ番長」だ。「プーさん」の他に習近平のニックネームには「包子」(肉まんじゅう)とか「習徳拉」がある。「習」はシ、「徳」はティ、「拉」はラーと発音するから「シティラー」。つまりヒトラーである。