進撃のウクライナ「ロシア領土に軍事司令部」…西側の心境は複雑

　10日以上ロシア領土のクルスク州で進撃しているウクライナ軍が15日（現地時間）、同州のこスジャ村を占領して軍事司令部を設置したと発表した。ウクライナが今回の攻撃目標がロシア領土占領ではなく、ロシアの国境地帯攻撃を防ぐためだと主張する中、ロシアも反撃を強化しており、今後の戦況の行方も霧に包まれている。

　AP通信の報道によると、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は同日夕方の記者会見で、クルスク州のスジャ村を完全に統制下に置いたと述べた。スジャ村は現在ウクライナが制圧したとする地域の中で最も大きな規模だ。ロシア西部のシベリアから到着した天然ガスがウクライナを経て欧州に向かうパイプラインの測定所が設置されており、クルスク州の中でも戦略的価値が高い地域とされる。

　特に同日、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は、人口5000人規模だったスジャに軍司令部事務室を設置したと明らかにした。これはウクライナがクルスク州に駐留していることを示唆している。BBCによると、シルスキー総司令官は同事務所が「法と秩序を維持し、（住民の）即刻的な必要を満たす」と述べたという。シルスキー総司令官は現在、ウクライナがクルスク州から35キロメートル進撃し、82の入植地を含む1150平方キロメートル（ソウル面積の約1.9倍）の領土を制圧したと主張した。

　一方、ロシアもウクライナ軍を撃退していると主張した。同日、ロシアは一時ウクライナに占領されたクルペツの統制権を再び取り戻したと発表した。ただし、ロシアはスジャから北西に約45キロメートル離れたグルシコボ地域に避難命令を出した。ウクライナがスジャを占領したと主張していることに対し、ロシアは現在まで反応を示していないが、クルスクとベルゴルド地域など国境地域の兵力管理を改善するために追加措置に入ったと、ロシア国防省がテレグラムを通じて明らかにした。

　6日、ロシア本土攻撃を敢行したウクライナは今回の作戦目標の一部がクルスク州に「緩衝地帯」を作るためだと主張した。今月14日、ウクライナのイゴール・クリメンコ内務相も「（緩衝地帯は）毎日敵対的な砲撃を受けているわが国境地帯の村を保護するためのもの」だと述べた。しかし、このためにウクライナがどれだけ多くの領土を、またどれだけ長く制圧しようと試みるかは明らかではないと、「ガーディアン」は報道した。

　攻勢が長くなるほど、ウクライナに兵器を供与してきた西側の思惑も複雑になっている。ウクライナは、米国やドイツ、英国が供与した兵器をロシア本土への攻撃に使用したという。BBCの報道によると、今回の攻撃に英国のチャレンジャー2戦車が動員したという報道が出たことを受け、ロシアが国防相の主宰で国境地域安保会議を開いたという。これら3カ国は、自国のどの兵器がウクライナによってロシア攻撃に使われたかについては明らかにしていない。

　しかし西側では、今回の侵攻に西側の兵器が使われたことに対するロシアの反応と今後のウクライナ兵器供与政策の方向をめぐり懸念が高まっている。ロシアはクルスク州への侵攻初期から背後に西側があると主張しており、ウクライナ軍が進撃を続けた場合、戦争拡大の可能性も排除きない。米政府高官はロイター通信に「ウクライナの（攻撃）目標は依然として不明だ」とし、「条件を明らかにせず、ロシアに進撃するほど（米国の）兵器政策はさらに複雑になる」と述べた。ウクライナが米国の兵器と車両を使って村と非軍事的目標を制圧するほど、米国が定めた兵器制限範囲内の行為なのかどうかについて疑問が生じる可能性があるということだ。

ベルリン/チャン・イェジ特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )