長崎の平和式典に主要国大使が相次ぎ欠席、背景に国益めぐる打算 失われた対話の機会

AI要約

長崎市は米国による原爆投下から79年となる8月9日、平和祈念式典を開いた。招待されなかったイスラエルやロシアの同盟国に対する批判が引き金となり、主要6カ国とEUの駐日大使らが欠席した。イスラエル大使は侵略国と同列にされることを危惧していた。

エマニュエル大使の強硬な姿勢により、他の主要国から異論が出なかった。イスラエルに対する負い目を抱く欧州諸国もある。式典への欠席は各国の国益を巡る計算や対話の不在に起因していた。

人類が平和に向けて団結できない状況が続いており、終戦の日である8月15日にも改善の兆しが見られない。今後も国際社会における葛藤が続く可能性が高い。

長崎の平和式典に主要国大使が相次ぎ欠席、背景に国益めぐる打算 失われた対話の機会

長崎市は米国による原爆投下から79年となる8月9日、平和祈念式典を開いた。イスラエルは招待されなかった。これを受けて、日本を除く主要6カ国(G6)と欧州連合(EU)の駐日大使や大使級は参加しなかった。各国は「ロシアとイスラエルの同一視は許されない」と主張した。混乱の経緯をたどると、属人的な要素や各国の国益を巡る計算、対話の不在などが浮かび上がる。8月15日は終戦の日。人類はなかなか平和に向けて団結できない。(牧野愛博=朝日新聞外交専門記者)

長崎市は「平穏で厳粛な雰囲気の下で式典を円滑に実施したい」(鈴木史朗市長)という理由で、イスラエルの式典への招待を見送った。同様に招待されなかった国には、ウクライナに侵攻したロシアとその同盟国ベラルーシがある。

G6とEUは7月19日付で、イスラエルを招待しないことに懸念を示す書簡を長崎市に送った。英国のロングボトム駐日大使は8月6日、式典への欠席を表明。在日米大使館も同7日、エマニュエル駐日大使の欠席を明らかにした。

エマニュエル大使やロングボトム大使らは同9日、イスラエルのコーヘン大使とともに、東京・増上寺での長崎原爆殉難者追悼会に出席。エマニュエル氏は「私が(長崎での式典に)出席すれば、侵略をしたロシアとイスラエルを同列に扱うことになる。それはできなかった」と語った。

複数の関係者によれば、主要国大使の欠席の動きを主導したのはエマニュエル氏だった。

エマニュエル氏はユダヤ系でもあり、コーヘン氏とも親しい関係だった。イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した直後の昨年10月、エマニュエル氏はコーヘン氏らとともに東京・渋谷でイスラエルへの支持を訴えた。エマニュエル氏は日本政府に対して繰り返し、長崎市がイスラエルを招待しない場合、自身も出席できなくなるという考えを伝えたという。

こうしたエマニュエル氏の強硬な姿勢に対し、英独仏など他の主要国から強い異論は出なかった。もともと、欧州諸国には「ホロコーストの経験から、イスラエルに歴史的な負い目がある」(関係者の一人)。