【社説】大きくなる「電気自動車恐怖症」…不安静める対策急がなくては=韓国

AI要約

韓国での電気自動車関連の火災事故により「電気自動車恐怖症」が広まっており、不安が拡大している。

関連当局が安全対策に遅れがあり、特に過充電を防ぐ装置が備わっていないなどの問題点が指摘されている。

政府は本格的な対策に乗り出し、メーカー情報公開や安全強化などが盛り込まれた総合対策を来月に発表する予定である。

相次ぐ火災事故で「電気自動車恐怖症」が拡大している。韓国政府の出遅れた対応の中で地方自治体などのその場しのぎ的な対策だけ続き不安も増幅されている。電気自動車の出入りと駐車をめぐり「電気自動車ニンビー」も広がっている。電気自動車購入忌避により関連産業が萎縮する懸念まで出ている。

電気自動車恐怖症を育てたのは1日に仁川(インチョン)の青羅(チョンラ)国際都市のマンション団地地下駐車場で発生した電気自動車火災だ。リチウムバッテリーに一度火が付けば1000度以上に上がる熱暴走が発生し、車72台が全焼したほか、設備と配管などが溶け、電気と水の供給が中断される莫大な被害が発生した。6日にも忠清南道錦山(チュンチョンナムド・クムサン)で駐車中の電気自動車から火災が起こる事故が発生し不安はさらに拡大した。

現在韓国の電気自動車普及台数は50万台を超えた。各国の親環境政策に足並みをそろえて政府が補助金を出すなど電気自動車普及で先に立った結果だ。車両普及が増え火災発生件数も増加している。消防庁によると、2021年に24件だった電気自動車火災は昨年72件に増えた。過去3年間に発生した139件の電気自動車火災のうち走行中に発生した火災は68件で、駐車中に36件、充電中に26件が発生した。

だが安全対策はお粗末なことこの上ない。青羅の火災事故後に現代自動車が13車種のバッテリーメーカーを公開したが、関連規定はまだない状態だ。電気自動車火災の主要原因のひとつに挙げられる過充電を防ぐ装置も備わっていないのがほとんどだ。6月基準で共同住宅の電気自動車充電器24万5435基のうち98.3%を占める緩速充電器に過充電を防ぐ電力線通信(PLC)モデムが付いていなかった。電気自動車充電施設設置時の火災対応に向けた消防施設規定もない。相当数の電気自動車充電施設が消防車の進入が不可能な地下駐車場に設置されているため被害がさらに大きくなる恐れがある。

やや遅い感はあるが政府はきのう関連官庁会議を開いて本格的な対策作りに乗り出した。来月発表する総合対策にはメーカー情報公開と充電施設安全強化、過充電防止と電気自動車火災のような特殊火災に対応する消防対策などが盛り込まれる見通しだ。

拡大する電気自動車恐怖症を沈静化するには関係当局の明確で実効性ある対策が必要だ。お粗末な対策では消費者の不安を解消できず、これは電気自動車市場の萎縮と競争力低下につながるほかないためだ。自動車メーカーやバッテリーメーカーも安全性強化に向けた努力にさらに積極的に出なければならない。国会も電気自動車安全対策強化に向けた立法に積極的に協力するよう望む。安全には政府と政界、民間の区別はない。隙間のない制度作りにスピードを出すことがみんなを助ける道だ。