「最前線で戦う仲間がいる」 戦禍に苦しむウクライナ選手たちがパリ五輪で奮闘

AI要約

ウクライナの選手がパリ五輪でロシアに勝利する意志を示し、戦禍の中でも競技に励んでいる様子が明らかになっている。

ウクライナ選手は、国歌を歌い、戦争の現実を訴えながらも金メダルを獲得し、驚異的な成績を残している。

選手たちはロシアの攻撃による影響を受けながらも、国の存在と勝利の意志を世界に示すために五輪で力を発揮している。

「最前線で戦う仲間がいる」 戦禍に苦しむウクライナ選手たちがパリ五輪で奮闘

【パリ=板東和正】パリ五輪でロシアから侵略を受けるウクライナの選手が戦禍の母国への思いを胸に善戦している。空襲の脅威にさらされたり、他国に移り住んだりしながら練習に励んできた選手は競技を通してロシアに勝利する意志を世界に向けて強調した。

「侵略後にウクライナで何が起こったか思い出して。毎日爆撃されています」。フェンシング女子サーブル団体で金メダルを獲得した3日、同国チームのオリガ・ハルラン選手はそう訴えた。

ハルラン選手は表彰式で国歌「ウクライナは滅びず」を歌い、「命をささげて最前線で戦う仲間がいる」と感極まった。

ウクライナは10日時点で金メダルを3個、銀メダルを5個、銅メダルを4個獲得した。参加国・地域のメダル総数は21位だが、五輪の専門家は「戦禍にありながら驚くべき成績を残している」とたたえた。

■選手、コーチも従軍

2022年2月の侵略以降、ウクライナでは3千人以上の選手やコーチが従軍し、470人以上が死亡。国内の500以上の運動施設が破壊された。同国はかつてスポーツ大国として知られていたが、今大会の派遣選手は約140人と夏季五輪で同国最小規模だった。

出場選手はロシアの攻撃を回避しながら練習を続ける難しさに直面した。男子高飛び込みに出場したオレクシー・セレダ選手は「空襲警報のたびに練習を中断し、地下に避難した」と話す。侵略後にイタリアに拠点を移したハルラン選手は「家族に会えないのはつらい」とこぼした。

そうした中、選手たちが五輪で力を発揮したのは「ウクライナの存在と勝利の意志を世界に示す」(同国の五輪委)強い思いがあったためだ。レスリング男子グレコローマンスタイル87キロ級で8日に銅メダルを獲得したジャン・ベレニュク選手は一時競技を離れていたが、侵略後にウクライナの強さを世界に伝えるために復帰した。4日の陸上女子走り高跳びで金メダルに輝いたヤロスラワ・マフチフ選手は「競技を通じて、国の独立のために戦っていることを示したい」と強調した。

■中立選手に孤立感