セウォル号と天安艦、同じ悲しみなのになぜ差別するのか【寄稿】

AI要約

北朝鮮による哨戒艦「天安」の撃沈事件から13年が経ち、PTSDやうつ病を抱える元軍人の支援が始まったが、資金不足により1年間で終了した。

セウォル号事件の被害者には医療支援が5年延長される一方、天安艦事件の被害者への支援は短命に終わったことに元軍人たちは悔しさを感じている。

国家の無関心や偽ニュースに苦しめられた元軍人たちにとって、心のケアや支援は大きな助けとなり、一筋の光をもたらした。

セウォル号と天安艦、同じ悲しみなのになぜ差別するのか【寄稿】

 「もどかしさのあまり、久しぶりに書き込むことにした。『われらヒーローに対するトラウマ治癒支援事業』が終わりを告げた」

 チェ・ウォンイル元天安艦長の言葉だ。一体どういうことだろうか。2010年3月、北朝鮮が哨戒艦「天安」を撃沈したことで46人が死亡した。故ナ・ヒョンミン上等兵の父ナ・ジェボンさん(55)は次のように語る。「天安艦沈没事件後、家族間の対話がなくなった。今は各自の日常に戻ったものの、人生に意味を見いだすのは容易でない。隠れて生きている感じ」。パク・チョンフン兵長の父は「1年365日、チョンフンのことが鮮明に思い出されるが、去っていった息子は『私のことは忘れて一生懸命に生きてほしい』と言っているのか、父親、母親の夢には一度も出てきたことがない」

 しかし、国家は彼らに無関心だった。チョ・ヨングン前天安艦財団理事長が「生き残った58人の勇士にも格別の愛情を注がなければなりません。46人の殉職勇士に負けずとも劣らない覚悟で命を懸け、国を守った英雄たちです」と支援を訴えたものの、国家の配慮はなかった。さらに天安艦に対するあらゆる偽ニュースが出回ったことで、民主党のスポークスマンだったクォン・チルスンは、生存将兵が全員救助されるまで天安艦を守ったチェ・ウォンイル艦長に対し「自分の部下を全員水葬させた張本人」とまで言い切った。

 彼らに対する支援が始まったのは13年が過ぎた後だった。2023年6月、大韓精神健康財団はウリ金融と手を結び、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病など感情的苦痛を患っている現職軍人と退職軍人の支援に乗り出した。対象者が100人に過ぎず、しかも心理検査の費用を含めて1人当たり最大で200万ウォン(約22万8000円)の支援であるため、決して十分な支援とは言えないが、国家の無関心の中で過ごしてきた軍人たちにとって、こうした配慮は大きな力となったことだろう。その上、同財団がこれら軍人を「われらのヒーロー」と称するなど、軍人たちのもやもやしていた心を解放した。チェ艦長もこれに対して謝意を表した。「トラウマにさらされても、それを認識できなかったり、分かっていても解決方法が分からず一人で悩むほかなかったりしていた負傷兵にとって、(この事業は)一筋の光にほかならなかった」。残念ながら、この事業は長続きしなかった。財源問題などにより事業開始から1年となる6月末で終了した。

 チェ艦長が悔しさをにじませたのは、単に事業が終了するという理由だけではなかった。セウォル号の被害者に対する支援と自分たちに対するそれが比較されたからだ。今年5月29日、セウォル号事件の被害者に対する医療支援の期限が5年延長される旨の「セウォル号被害支援法」改正案が可決されたのだ。10年前、珍島沖で沈没し、304人が犠牲になったセウォル号は、遺族や生存者をはじめ全国民にとって大きな悲しみとなった。彼らに対する支援が必要なのは当然のことだ。当時朴槿恵(パク・クンヘ)政権は、生活支援金を支給し、檀園高の生徒たちと犠牲者の直系親族や兄弟姉妹などに対し大学入試の特別選考を施行するとともに医療支援、すなわち「セウォル号沈没事件による身体的・精神的疾病、および負傷とその後遺症の治療、看病、または補助装具の使用に要される費用」を支給することにした。もともと医療支援は1年、カウンセリングなど心理療法による支援は5年とされていたが、朴槿恵政権の弾劾後に政権を握った文在寅(ムン・ジェイン)政権が医療支援期限を「事故後10年」に延長した。