【コラム】米国は2008年のように景気低迷に進むのか

AI要約

資本主義経済は景気サイクルの頂点と低点を行き来する。サイクルが頂点を過ぎれば景気は沈滞のトンネルに進入する。失業者が増えて株価は暴落する。

景気低迷が起きる前に共通して発生する現象は急激な金利引き上げだ。FRBが高強度で金利を上げたというのは景気過熱が激しくインフレ圧力が非常に大きくなったという意味だ。物価上昇はそれだけで景気の足を引っ張る。

景気低迷の経路が典型的に現れたのが2008年の金融危機直前だ。2000年代初めの低金利環境の中で景気は回復し資産市場にバブルが生じた。物価上昇が4%を超えるとFRBは金利引き上げを加速化した。2004年に1.0%だった金利を2006年には5.25%まで引き上げた。

資本主義経済は景気サイクルの頂点と低点を行き来する。サイクルが頂点を過ぎれば景気は沈滞のトンネルに進入する。失業者が増えて株価は暴落する。政府は景気低迷を避けようともがく。だが時がくれば景気低迷は必ず訪れる。

この64年間に米国経済は9回の景気沈滞を経験した。コロナ禍による沈滞を除けば8年に1回の割合で景気低迷がきた。失業率が10%を超える金融危機級の沈滞も2回あった。米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を21%に引き上げた1980年代初めと不動産バブルが崩壊した後に発生した2008年の金融危機の時だった。

景気低迷が起きる前に共通して発生する現象は急激な金利引き上げだ。FRBが高強度で金利を上げたというのは景気過熱が激しくインフレ圧力が非常に大きくなったという意味だ。物価上昇はそれだけで景気の足を引っ張る。

好景気の中である程度の物価上昇を受け入れた消費者も、ティッピングポイントを過ぎれば強い拒否感を見せる。不要不急な品目以外には支出を減らす。企業の売り上げにも致命的な打撃が加えられる。株価と不動産も直撃弾を受ける。

景気低迷の経路が典型的に現れたのが2008年の金融危機直前だ。2000年代初めの低金利環境の中で景気は回復し資産市場にバブルが生じた。物価上昇が4%を超えるとFRBは金利引き上げを加速化した。2004年に1.0%だった金利を2006年には5.25%まで引き上げた。

2007年に入り経済が安定成長を見せるとFRBは高金利基調を維持した。物価が依然として不安定だという口実で利引下げを先送りした。同年9月になって初めて金利を0.5%下げた。不動産価格の下降線が険しく金融市場の不安感が大きくなったためだ。

金利引き下げ前の8月に非公開会議を開いて市中流動性を増やすことに決めた。だがFRBはすでに出遅れていた。2008年初めに景気低迷のシグナルである「サームルール」が発動した。3カ月平均失業率が過去12カ月の最低値より0.5ポイント高まったためだ。

7月に米国の失業率が4.3%を超えた。サームルールが再度発動した。その直後から株価が急落している。米国経済が近く沈滞のトンネルに進入するという懸念を反映している。今回もFRBは金利引き下げのタイミングを逃した。

2007年にFRBはサームルールが発動する4カ月前に金利を下げたが、沈滞を防ぐことはできなかった。むしろ金融危機が迫って株価はピークに比べ60%近く下落した。FRBは金利を上げる時には確実に上げて物価を押さえ、下げる時はいち早く下げて沈滞を防がなければならなかった。

キム・ソンジェ/米ファーマン大学経営学教授