台湾、中国軍事侵攻を描いたテレビシリーズを製作 台湾の人々に衝撃

AI要約

中国の侵略に直面する台湾を描いたテレビシリーズ「ゼロデイ」の予告編が話題に

台湾人の感情と想像力をかき立て、中国の脅威に対する警戒を呼び起こす

政府や軍も番組を支持し、制作チームは国際展開も模索中

取材は台湾が直面する現実と政治テーマを避けずに取り組んでいることを示唆

現在の政治状況や芸術的自由に関して言及

中国の影響力や自由度の違いが浮き彫りになる

テレビドラマの制作に政府や投資家、軍の協力を得た過程を解説

作品の背景や影響を広く考察

台湾、中国軍事侵攻を描いたテレビシリーズを製作 台湾の人々に衝撃

香港/台北(CNN) 軍の封鎖後、包囲された島は恐怖と混乱に見舞われた。住民は現金を引き出そうと躍起になり、外国人は我先にと避難し、刑務所では暴動が勃発。テレビ局はハッキングされ、敵のプロパガンダを放送する。

これらの架空のシーンは、台湾で近々放映されるテレビシリーズ「ゼロデイ」の予告編だ。先月公開されて以来、差し迫った中国の侵略がどのようなものかについての台湾の人々の感情と想像力をかき立てている。

この10話構成のシリーズは、中国人民解放軍(PLA)による侵略の可能性をドラマ化した台湾初の作品だ。この脅威は数十年にわたり台湾に立ちはだかっていたが、中国が軍事力をますます誇示し、緊張が新たな高みに達するにつれ、その度合いは増している。

17分間の予告編は台湾の人々に衝撃を与えた。地元メディアで大きく取り上げられ、ユーチューブでは100万回以上再生された。

動画には1000件以上の支持コメントが集まった一方で、危機を誇張しパニックを引き起こすと主張する野党政治家などの批判も寄せられた。

2300万人の台湾住民の多くは、中国の軍事的脅威に慣れてきている。習近平(シーチンピン)国家主席の下、その脅威がより頻繁かつ顕著になってもだ。

しかし「ゼロデイ」のプロデューサーである鄭心媚氏は、台湾の同胞が差し迫った紛争の危機に「あまりにも無感覚」になっていることを懸念している。

鄭氏はCNNに対し、「率直に言って、誰もが戦争について自分なりの恐怖心や想像力を持っているが、日常生活においては多くの人がそれを避けたり、存在しないかのように振る舞ったりしている」と語る。

「しかしこの2年間で危機が大きくなるなか、私たちはそれを真剣に見つめ、このパンドラの箱を開けるべき時が来たと思う」(鄭氏)

ロシアのウクライナ侵攻から半年以上が経過し、ペロシ前米下院議長の台北訪問が中国の大規模な軍事演習を引き起こしてから数カ月後の2022年後半、鄭氏は台湾に対する中国の脅威をテレビドラマ化することを決定した。

鄭氏によると、これは微妙な政治テーマを伝統的に避けてきたテレビ業界では前例のないプロジェクトだったが、同じ考えを持つパートナーを見つけるのには困らなかった。

台湾で最も裕福な人物の一人であり、台湾初の半導体企業UMCを創業した曹興誠氏が、この番組の最初の主要投資家となった。曹氏は以前から中国の脅威を警告し、台湾の防衛強化を支援するため数千万ドルを献金してきた。

鄭氏は10人の監督からなるチームを編成。それぞれが「ゼロデイ」の独立したエピソードを担当している。人選の主な基準は中国に禁止されることを恐れないことだ。

14億人という巨大な中国市場は、長い間台湾の俳優や監督を魅了してきた。しかし、緊張が高まるにつれ、台湾のアーティストは中国の政治路線に明確に従うか、魅力的な市場から締め出されるかの選択に直面することが増えている。

同作品の予告編とエピソードの一つを担当した監督は「このシリーズの存在は、中国の攻撃的な態度に抵抗しようとする投資家や才能ある人たちがいること、彼らのための市場があることを示している」と語った。

台湾政府と軍もこのテレビシリーズを支持した。

総統府は敷地内での撮影を許可。これには大統領が演説する部屋も含まれる。軍の承認を得て、定例訓練中の軍艦上での撮影も敢行した。

当局の協力を得るのは容易ではなかった。

鄭氏は「最初は多くのコミュニケーションと説得が必要だった」と振り返る。一方で、当局は切迫する問題の重要性と、映画やテレビ番組の世論を形成する力を理解していたという。「最終的に当局はこの件についてテレビシリーズを制作するのは良いことだと判断した」

この番組は台湾文化省からも資金提供を受けた。ただし、先の監督は、資金提供や撮影許可を受けたからといって制作に干渉する権利を政府に与えることはなく、「政府は脚本を一切変更していない」と強調。これは政治的プロパガンダでも愛国映画でもないと語った。

この水準の芸術的、政治的自由を実現することは、中国本土はおろか香港でさえ不可能だ。かつての香港は比較的自由で率直な映画産業を誇っていたが、近年は広範な取り締まりの一環で抑制されている。

3月に始まった「ゼロデイ」の撮影は11月末までに終了する見込みだ。番組は来年台湾で放送予定。

制作チームは米ネットフリックスなどのストリーミング事業者とも連絡を取り、国際公開の可能性を探っているが、話し合いはまだ初期段階だという。