中国のドーピング疑惑、パリ五輪競泳に落とす影

AI要約

中国の競泳選手、張雨霏が禁止薬物検査で陽性反応を示した問題が浮上し、中国チームが国際スポーツ界で論争の的となっている。

選手の陽性反応はトリメタジジンがホテルのレストランで汚染されたことによる可能性が高いとされたが、競泳界や米国反ドーピング機関から批判が相次いでいる。

反ドーピング体制の透明性に対する懸念が高まる中、中国チームは競技に臨んでいる。

(CNN) 中国のスター競泳選手、張雨霏はパリ五輪が始まってから72時間ですでに二つの銅メダルを獲得した。しかし、中国で「バタフライの女王」と呼ばれる張の勝利には、大勢のファンやスポーツ界から厳しい視線が向けられている。

張を含め、2021年の東京五輪に参加した中国競泳選手のほぼ半数が大会の数カ月前に禁止薬物の検査で陽性反応を示したことが発覚し、中国チームは国際スポーツ界を揺るがす論争の渦中にいる。

中国反ドーピング機関(CHINADA)は、禁止されている心臓薬トリメタジジンの陽性反応は、ホテルのレストランで汚染された結果である可能性が高いと判断。選手らは大会への出場を認められた。世界反ドーピング機関(WADA)も申し立てすることなく容認した。

しかし、米紙ニューヨーク・タイムズなどがこの状況を4月に初めて報じたことで、競泳界の反発を招いている。競泳界ではドーピング規則に違反した選手は何年も出場停止になる可能性がある。ニューヨーク・タイムズは、張選手が当時陽性反応を示した競泳選手の1人だと伝えた。

21年の事態が明るみに出てから、著名なアスリートたちは反ドーピング体制に対する懸念を表明している。米国反ドーピング機関の責任者はWADAが隠蔽(いんぺい)したとし、今週初めにはWADAの失態がオリンピックに「影を落とした」と非難した。米国政府は個別に刑事捜査を進めている。

中国のアスリートにかかるプレッシャーは明らかだ。

先週末から競技が始まると、張は記者団に対し、他の選手が自分を「色眼鏡」で見て、自分と競うことを嫌がるのではないかと「深く憂慮している」と語った。とても不当な扱いを受けたと感じており、中国の競泳選手はドーピングに関与していないとも話した。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、同紙が今週初めに報じた22年の別の事案は、パリ大会に参加する中国競泳選手に関するものだ。

WADAは声明で、この事案を徹底的に調査したと発表。今年初めに他の競技の中国人選手の2件の陽性反応と関連付けた上で、陽性反応の原因が汚染された肉だったとする中国の調査結果に異議を唱える「証拠はない」と結論付けた。中国当局は検査した肉の標本からステロイドが見つかったと指摘していた。

同機関は「超大国間の地政学的緊張に不当に巻き込まれた」とも述べた。米国と同国の反ドーピング機関から受けた反発を指しているとみられる。

こうした最近の状況も受け、反ドーピング体制の透明性に対する懸念は渦巻き続けている。